リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「あー。リフレッシュ休暇でしたっけ。フランスに行ってきたんですか?」

いいなあと羨ましがる明子に、新婚旅行以来の海外旅行なんだと、上原はやや苦笑いを浮かべた。

「なんか、俺のための休暇が、家族孝行の休暇になっちまった」
「いいじゃないですか。たまには」

午前様の飲兵衛を、起きて待っててくれる奥様じゃないですか。
明子にそう言われて、上原はまあなと、嬉しげに笑った。

「娘もまだ幼稚園だからさ。休ませるの簡単だしな。思い切って行ってきてよかったよ」

公園で遊びまくってきた、娘と。
子煩悩な上原は、顔を綻ばせてそんなことを言いながら「そうそう、広島の案件、助かったよ」と、明子に向かって手を合わせた。

「もう。またやりましたね」

上原がマシンの手配ミスをやらかしたことを思い出し、明子は人差し指で目をつり上げて叱るような顔で上原を見た。

「助かった。俺のチョンボ。お咎めなしで片付いたよ」
「それはなによりでした」
「ホントにありがとな」
「いや、私に礼はいりませんから。島野係長に」
「おう。電話した。もう、這い蹲って謝ったぞ。電話だけどな」
「伝わっているといいですね。それが」
「なあ。……でさ、お前さん、誰と付き合ってんの? 今」
「はあ?!」

前触れもなく、どすんと落下してきた爆弾に、明子は目をバチバチと瞬かせて、唖然とした面持ちで上原を見つめた。
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