リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「だいたい、帰ってきたばかりの人が、なんで胴元なんですか。人がてんてこ舞いしていることで、そんな賭け事しないくださいよっ」
「いや。だってさ、面白そうな話しだったからさ。小杉もいよいよ結婚かあってことで。いっそのこと、月末の激励会での別注ドンペリの代金を掛けようぜって提案したら、わらわらと人がだな」
「きーっ 私にも飲ませろっ」

眉をキリリと吊り上げる明子に、「いやいや、主任、そうじゃないでしょう」と、木村が笑い転げていた。
営業さんは面白いことするなあと、笑う木村の声に便乗して、そういう楽しい賭け事ならいいなあと、野木がそれを笑って茶化した。
その言葉に、また暗くなりかけていた雰囲気が、瞬く間にやいのやいのの喧騒に変わる。

「だって、ドンペリよ。飲みたいじゃない」
「いや、飲めない僕にそれを言われても」
「だから、飲めるように俺が鍛えてやると」
「川田主任。それは本心ですかっ ホントにホントに本心ですかっ」
「半分くらいわな」
「なんだ。木村、下戸か? 小杉に鍛えてもらえ」
「いやいや。ウチには他にもたくさん、飲兵衛がいますから。小杉が出る幕はありません」
「あー。部課長全員、鬼みたいに飲むもんな。ここは」
「そうですね、ホントに、鬼のようにガブガブと。そちらとは大違いですよね」
「なあ。いいなあ。ほれ、ウチは上がそんなに飲まねえから、飲兵衛はあんがい、ちょいと肩身が狭いんだよな。島野と小林さんもかなり強いもんなあ。それで小杉だろ。社内の七強が揃ったな」
「ちょっと。上原さん。小杉、怒りますよ。嫁入り前の娘を、そんな飲兵衛軍団に入れないでくださいよっ」
「わはは。本当のことだろうが。いいだろ、時期に嫁に行くなら。で、どこに嫁に行くんだ?」

ドンペリが掛かってるんだ、教えろと、上原はズレ始めてきた話しの軌道を元に戻した。
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