リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「どこって」

引っ越しじゃないんですからと、明子は上原のその軽い言い様に、ただ呆れ交じりに苦笑するしかなかった。

「とりあえず、候補に上がっているのは、牧野と島野と沼田な」
「あのですね」

明子はやれやれと言うように、息を吐いた。
そんな明子に構うことなく、上原はぺらぺらと喋り続ける。

「さすがに、トイプー木村の名前はなかったな」
「わん。木村は売約済みです。わん」
「あはは。結婚するんだってな、おめでとさん」
「あざーっす」
「あとな、恐ろしいことに、林田さんの名前もあったぞ」
「いやですよ。なんて恐ろしいを言うんですかっ」
「俺にそう言われてもだな」
「四つ目のバツになんて、ぜったい、なりたくないですよっ」

明子のその反論に、上原を含めた周囲からも思わず苦笑が零れる。

「なんで、バツが前提だよ。これが最後となるかもしれねえだろ」
「林田本部長ですよ? すでにバツが三つもある、あの林田本部長ですよ?」
「まあ、な。ああ、あとな。なんだ、あれだ。別れた元カレとの復縁説もあったな」
「はあ?!」

なにをバカなこと言ってるんですかっ
想像もしていなかったその名前に、明子の顔が引き攣った。


(いくらなんでも、ひどい)


思わず、爪が手のひらに食い込むほどきつく握り締めて、明子は上原を睨みつけた。
上原に怒りをぶつけたところで仕方がないことだと判っていたも、そうせずにはいられなかった。

「上原さん。ちょっと、それは」

だいたい、相手の男は結婚してるじゃないですか。
そう窘める川田に、けれど、上原はさらりとした口調で、思いがけないことを口にしてた。
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