リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「で。なんとなく話しの流れで、その、お前の昔の男の離婚の話しも聞いたそうだ。そのときは課長も気にもしなかったらしいんだけどな、なにかあの仕事、システムのほうからは小杉が出るらしいって聞いて、そういえばって、その話を思い出しちまったそうで、小杉くんと昔、付き合っていたヤツがあの会社にいるんだよなって、周りの連中に洩らしちまったそうでな。で、つい、その男も今は独身らしいから、あんがい、またヨリが戻るかねえと冗談混じりに言っていたら、あっという間に尾びれ背びれがくっついて、見事な復縁説ができあがってしまったみたいなんだとさ。課長も頭を抱えていた」
うっかりにしても、こんな微妙な時期に申し訳ないことをしたと言ってきてくれと言うんで、言付かってきたぞ。
けらけらと、あくまでも陽気な声に告げる上原に、明子は「判りました」と言いながら、疲れ交じりの息を盛大に吐きこぼした。
「ついでにな。お前、相手の女は知っているのか?」
「いいえ。知りません。聞いてもいないですし。調べてもいませんし」
「んー。そっか。あのな。IT企画室にいるそうだ。担当になったら、もしかしたら顔を合わせることになるかもしれないから、そのつもりでなって。課長からの情報」
「いやーん。もう。著しく気力が萎えましたよ。今。もう、なにもかも放り出して、世界の果てに飛んでいきたくなりましたよ、あっこちゃん」
逃避行の最強呪文はなんだったかしらと、頭を抱えて明子は呻いた。
(牧野っ バカっ)
(そういうことは、ちゃんと教えてよっ)
一旦は引き受けようと決まりかけていた心が、その言葉でまた怯み始めた。
それを見越して黙っていたのだとしたら、牧野に平手打ちの一つでもかましてやりたい気分だわと、明子は瞼の裏に浮かんだにやりと笑う牧野の顔に、思わず握り拳を作った。
うっかりにしても、こんな微妙な時期に申し訳ないことをしたと言ってきてくれと言うんで、言付かってきたぞ。
けらけらと、あくまでも陽気な声に告げる上原に、明子は「判りました」と言いながら、疲れ交じりの息を盛大に吐きこぼした。
「ついでにな。お前、相手の女は知っているのか?」
「いいえ。知りません。聞いてもいないですし。調べてもいませんし」
「んー。そっか。あのな。IT企画室にいるそうだ。担当になったら、もしかしたら顔を合わせることになるかもしれないから、そのつもりでなって。課長からの情報」
「いやーん。もう。著しく気力が萎えましたよ。今。もう、なにもかも放り出して、世界の果てに飛んでいきたくなりましたよ、あっこちゃん」
逃避行の最強呪文はなんだったかしらと、頭を抱えて明子は呻いた。
(牧野っ バカっ)
(そういうことは、ちゃんと教えてよっ)
一旦は引き受けようと決まりかけていた心が、その言葉でまた怯み始めた。
それを見越して黙っていたのだとしたら、牧野に平手打ちの一つでもかましてやりたい気分だわと、明子は瞼の裏に浮かんだにやりと笑う牧野の顔に、思わず握り拳を作った。