リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「上原さんっ あんた、煩いよっ だいたい、あんたはまだ休暇中だろっ」

さっさと帰れよっ
会議室から出てきた大男は、普段もデカいと言われるその声を、さらに張り上げて上原を怒鳴りつけた。
その声に、上原は一瞬肩をビクンと震わせたものの、すぐにおどけた表情を浮かべて「出たな、色男、ヒューヒュー」と冷やかし、憤慨しきっている牧野の顔を見ながらにたりと笑った。

「なー。トトカルチョしてんだけどさー。答え、教えてくんね?」
「うるせっ」
「一応、候補者は」
「聞こえてたよっ」
「そっか。あとは、俺と伊東と町田は自ら立候補して、自分に三万ずつ掛けてきた」
「なんでっ、あんたたちがっ」
「いいだろ、別に。あー。一応な、ドンペリ頼んで残った金で、どかんと小杉の結婚祝いの品を買う予定だからな」

喚く牧野など意にも返さず、笑いながらそう答えてから明子に目を向けた上原は、さらりとそんなことを明子に告げた。

「祝いの品って。予定もないのになにを先走って」
「ないのかよ」「あるとくらい言いやがれっ」

笑う上原の言葉に怒鳴る牧野の言葉が被り、明子は「なにを言ってるんですか、ばかですか」と吐き捨てて、牧野を冷ややかな目で睨み返した。


(人を謀ってばかりいるような人、いやですよ)
(もう。バカ)
(バカバカ)


心の中であっかんべーと舌を出し、ふんと名を鳴らしてそっぽを向く明子に、上原はまたケタケタと笑い出した。
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