リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「まあ、いいや。決まったら言えや。けっこうな、いい金額だぞ。なんせ、牧野に掛けたヤツが一人もいねえ」
「あのそれ、賭けとして成立してますか?」

楽しそうに笑いながら告げられた言葉に、それまで沈黙を続けていた村田が、堪らず、呆れた声でそう尋ね返した。
明子も、思わず上原の顔を見つめ返した。
大本命を外してどうするんですかという雰囲気が漂う部屋で、上原はいいんだよと、ただ楽しそうに笑う。

「勝ち負けの問題じゃないからな」
「上原。素直にご祝儀は用意はしたからなと、そう言えばいいだろ。トトカルチョなんて言い方しないで」

牧野課長、でかい図体で入り口を塞がんでくださいよと、そう文句を言いながら会議室から出てきた小林は、相変わらず捻くれたやつだなあと、上原に苦笑しながら席に着いた。

「いや。ドンベリが掛かっているのは本当だし。へへへ。ドンペリだ、ドンペリ」
「どんだけ賭けたんだよ。お前らは」
「んー。井上課長は林田本部長に五万賭けたよ。自分が披露宴に呼ばれることはないだろうから、ご祝儀だとさ。あとな、参加した女子は島野と沼田に集中したな。お祝いなんにしましょーって、相談してるぞ」
「ほれみろ。やっぱり、ご祝儀じゃねえか」
「しまったあ。正直者のこの口が、うっかり滑ったあ」

わははと笑いながら立ち上がった上原は、さて、そろそろ退散しようと言って伸びをした。

「とりあえず、あの仕事絡みの情報は伝えたからな。小杉さん。乗り込むなら武器の一つでも貰っていけよ」
「武器?」

なんですか、それは、また首を傾げる明子に、さあ、なんだろうねえと、上原は笑うだけだった。
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