リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「ただな。新事業部にお前をって話しは、その前から出でいた話しだからな。そこはごっちゃにするなよ」

それとこれとは別だから、正式に打診があったら、それはそれでちゃんと考えろよと続く牧野の言葉に、明子はなんだかなあと、首を傾げ続けた。

「だって、その白羽の矢だって、ボンボンが立てたんですよね。あの仕事ありきでの構想でしょ」
「少なくとも、あの話があがる前から、小杉の名前はあげていたよ」

違う、逆だと、牧野は必死の体で明子に言い聞かせる。

「新事業部の件は、一応、ボンボンが書類みて審査はしてるんだよ。適性ありそう社員の」
「私に適正なんて」
「お前、客の定着率がめちゃくちゃいいんだよ」
「定着率?」

なんですか、それは。
牧野と手を繋いだまま、明子はどういう意味かと、眉を八の時にして尋ね返した。

「営業でも支援でも。お前、客からのクレームで担当を外されるなんてことなかったろ?」
「そう、ですね。でも、そんなの」
「ダメなやつはダメなんだよ。吉田がいい例だろ。まあ、ありゃ、極端過ぎる例だけどな。営業でも支援でもいただろう、客付きの悪いヤツって」

そう言われて思い返した明子の脳裏に、数名の該当者が思い浮かんだ。
確かに、営業でもどこでも、牧野が言うような社員はいた。

「仕事の都合で変わっても、また、その客の担当に戻されることもよくあっただろ?」
「ありました」
「なんかな、客受けがいいらしい、お前」
「そうなんですか?」

物怖じしないからかなあと、明子は牧野の言葉を不思議がるように首を振った。
そんな明子に、牧野は苦笑いを浮かべるしかなかった。
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