リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「担当を他のヤツに替えると、小杉さんに戻してくれって、たいていの客から言われるらしい。支援でも、社内教育なんかでお前出すと、次にそこから依頼がくると、必ずこの前の人にしてくれって、お前を指名してくるんだと。だから、営業でも支援でも、抱えている顧客が多かったろ、お前」
「さあ。担当させて貰っているお客様の数なんて、人と比べて数えたことなんてないんで」
「上司からは、そう評価をされているんだよ、お前。支援からウチに引っ張ってきたときだって、しばらくは愚痴られてたんたぞ、俺。沢口さんから。客から教育支援の依頼が来て、小杉さんって言われるたびに、すいませんすいませんって頭を下げなきゃならないんですよって」
「そんな話」

初めて聞きましたもん。
そう言って剥れる明子に、牧野はしょうがねえなあと笑う。

「言っただろ。自信持てって」
「だからと言って、ボンボン様にご指名される謂れは」
「まあ、俺の影響がまったくないと言わねえけどな。ボンボンも戻ったら、サクっと地盤固めしたいところだろうから、話が通しやすい俺寄りのヤツを、自分の派閥に引き込もうって魂胆はあるんだと思う」
「やっぱり、きな臭い謀略に巻き込みましたねっ」
「きな臭いってな」
「どう考えたも、関わりたくない派閥抗争に、ぎゅうぎゅうに巻き込まれてるじゃないですかっ」
「いいだろ。牧野派なんだろ。なら、こっちに付くのが当然だろうが」

したり顔でそういう牧野に、いったいそれを誰から聞いたんですかと、明子は尋ね返そうとして、すでに小林の耳に入っていることを思い出した。


(そりゃあ……、筒抜けだわ)
(君島さんとツーカーだけど、小林さんともツーカーだもの)
(で、君島さんと小林は阿吽だし)
(いろんなことが、ダダ漏れの筒抜けだわ)


失敗したと思いつつ、面白おかしく脚色されて聞かされてしまうよりかはマシな伝わり方よねと、明子はそう自分に言い聞かせた。
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