リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「顔がよくて、仕事も出来る出世頭だからだよ。玉に瑕をあげるなら、口の悪さだけだろう」

そんなん、モテるに決まってるだろ。
しれっとした顔で当然のようにそういう牧野に、明子はいずれ必ずこの男に、謙遜という日本人の美徳を教えてやるっと、胸中できつく決意した。

「なあ。土建屋どうだった?」

いたか、先代?
思い出したようにそう尋ねてきた牧野に、いましたよと明子は答えた。

「牧野さんが、ご飯を食べさせてくれって言ってますと伝えたら、食いしん坊は健在かと笑ってましたよ」
「きひひ。連絡してみるかな。なに、食わせてもらうかな」
「牧野さん。もう課長になったんですから、たまには、牧野さんがご馳走してあげたらどうですか?」

明子の言葉に、牧野は虚を突かれたように真顔になって、それからすぐに破顔した。

「そうだな。俺がご馳走するつていうのもありだな」

なにが良いかな。爺さん、舌肥えてるしな。
目を輝かせて楽しそうにあれこれと考え始めた牧野に、明子は少しだけパツの悪そうな顔で、それとですねえと言葉をかけた。

「ん?」
「えーと。バレました」
「なにが?」
「えーと。牧野さんと、そのですね、私メのことがですね」

向こうさんの耳に入れました。
勝手にすいませんと、少しだけ項垂れてみせた明子に、牧野はあっけらかんとした声で、そうかと答えて笑った。
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