リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「俺はいいさ。別に。お前は、なにかやりずらくなってないか。大丈夫か?」

明子を気遣うその声に、眦が嬉しさに綻んでしまう。
体を弾ませ揺らして、喜んでしまいたくなる。

「先代の社長さんは、そうかそうか、再婚するかって、笑ってくれましたけど」
「うん?」
「社長と専務と常務は、とっかえひっかえ、会議室に顔を出してきまして」
「うん?」
「営業から出ている社員さんが、ちょっと、観察しているみたいな雰囲気でって感じですね。まあ、特になにか聞かれるようなことは、今のところありませんけど」
「三馬鹿は気にしなくていい。もともと、俺の離婚に関しては中立の立場でいたからな。お前の顔を見にきたのは、ただの好奇心からだろうしな」
「ですから、お客様はバカとかって言うのはですね」

牧野さんっ、ダメですよっと、やや牧野を睨むようにして、明子は牧野を窘めるが、とうの牧野はそんな言葉など聞いてもいないかのように、営業かあと喋り続けた。

「栗橋ってヤツじゃないだろう、出てきてるの?」
「違います」
「栗橋っていうのが声かけてきたら、相手の男だ。なんか言われても放っておけ。あれこれ難癖つけてくるよな事があったら、すぐに俺に言え」

乗り込んでいってやらぁ。
鼻を鳴らしてそう力む牧野に、いや、別に乗り込んでこなくていいですよと明子は苦笑した。

「別に。なにかを言われても、相手になんてしませんよ」

そんな人。
そう言って笑う明子の顔を横目で見て、牧野もそうかと笑った。
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