リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「牧野さん」
「ん?」
信号を見ていた牧野が、なんだというように、明子を横目で眺めた。
明子はほんの一瞬、迷いを浮かべたが、すぐに口を開いた。
「小林さんから、聞いたんですけど」
「うん?」
「……お母さんが、入院してるって」
牧野の顔が、瞬く間に凍り付いていくのが判った。
明子は慎重に言葉を選びつつ、話を続けていく。
「会ったほうがいいとか、そういう話じゃなりませんから。ただ、小林さんから聞いてますからって、それだけです」
どういう意味だと眉を潜める牧野に、明子は小林の言葉を聞かせた。
「どこかで、ばったり会ってしまったときの牧野さんが心配だって、小林さんが言ってました。私も、心配です。もし、そんなことになって、辛くなるようなことがあったら、言ってくださいね。隠したり、我慢したりしないで、言ってください。私、ちゃんと聞いてますから。だから、一人で抱え込まないでくださいね」
牧野の唇が、ハンドルを握る手が、かすかに震えているのが明子にも判った。
きっと、子どものころに負ったその大きな傷は、これだけの時間を経ても尚、まだ癒えきらず、牧野の中に残っているに違いないと、明子はそう思った。
一緒に生きると決めた。
ともに生きると、そう決めた。
明子の傍らで眠るその顔を見つめながら、だから、もう寂しくないと明子は思えた。
辛いも、苦しいも、悲しいも、寂しいも。
全部、受け止めて抱きしめてくれるこの人の。
辛いも、苦しいも、悲しいも、寂しいも。
全部、受け止めて抱きしめたいと。
明子は眠るその顔に、そう思った。
信号が変わり、車が静かに走り出した。
「うん。ありがとな」
小さいけれど、しっかりとした声で返ってきたその言葉に、明子は微笑んだ。
「ん?」
信号を見ていた牧野が、なんだというように、明子を横目で眺めた。
明子はほんの一瞬、迷いを浮かべたが、すぐに口を開いた。
「小林さんから、聞いたんですけど」
「うん?」
「……お母さんが、入院してるって」
牧野の顔が、瞬く間に凍り付いていくのが判った。
明子は慎重に言葉を選びつつ、話を続けていく。
「会ったほうがいいとか、そういう話じゃなりませんから。ただ、小林さんから聞いてますからって、それだけです」
どういう意味だと眉を潜める牧野に、明子は小林の言葉を聞かせた。
「どこかで、ばったり会ってしまったときの牧野さんが心配だって、小林さんが言ってました。私も、心配です。もし、そんなことになって、辛くなるようなことがあったら、言ってくださいね。隠したり、我慢したりしないで、言ってください。私、ちゃんと聞いてますから。だから、一人で抱え込まないでくださいね」
牧野の唇が、ハンドルを握る手が、かすかに震えているのが明子にも判った。
きっと、子どものころに負ったその大きな傷は、これだけの時間を経ても尚、まだ癒えきらず、牧野の中に残っているに違いないと、明子はそう思った。
一緒に生きると決めた。
ともに生きると、そう決めた。
明子の傍らで眠るその顔を見つめながら、だから、もう寂しくないと明子は思えた。
辛いも、苦しいも、悲しいも、寂しいも。
全部、受け止めて抱きしめてくれるこの人の。
辛いも、苦しいも、悲しいも、寂しいも。
全部、受け止めて抱きしめたいと。
明子は眠るその顔に、そう思った。
信号が変わり、車が静かに走り出した。
「うん。ありがとな」
小さいけれど、しっかりとした声で返ってきたその言葉に、明子は微笑んだ。