リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
面会時間は、十九時までとされていた。
なにか見舞いの品をという明子に、いらないいらないと、牧野は手を振り、ずんずんと歩いていってしまう。
明子はそんな牧野を追いかけていくだけで、精一杯になった。
「お返しはなしでって言っても、あの人、見舞いを貰うと、必ず、なんかお返しを用意しちまうんだよ。何度も入退院してるから、そのたびにそれしてると大変だろ。だから、職場の人も見舞いにきても手ぶらでな。俺もそうしてるんだ」
そう言われては、明子としてもそれに従うしかなかった。
「木村くんから、預かってきたもの。渡さないほうがいいですか?」
暗黙のルールが判らないので、明子は素直に牧野にそれを尋ねた。
「ん? あれか。渡してやれよ。あれは、ものじゃない、気持ちだろ」
笑う牧野に、明子も嬉しそうに笑って頷いた。
病室の近くまできて、牧野が立ち止まった。
どうしたのだろうと牧野に身を向けると、牧野が「あのな」と、口を開いた。
「はい?」
「辛気くさい顔、すんな」
やや低い声で明子にそう言いおくと、牧野は何事もなかったように歩き出した。
そうして、なんも見舞いの持たないまま、教えてもらった病室を、明子は牧野とともに訪ねた。
「赤木さん。具合どうですか?」
こんにちはと、いつもと変わらぬ声で挨拶をしながら、牧野は病室に入っていった。
「ああ。牧野さん」
牧野の姿を見て、慌てて体を起こそうとする赤木を、牧野は押しとどめた。
なにか見舞いの品をという明子に、いらないいらないと、牧野は手を振り、ずんずんと歩いていってしまう。
明子はそんな牧野を追いかけていくだけで、精一杯になった。
「お返しはなしでって言っても、あの人、見舞いを貰うと、必ず、なんかお返しを用意しちまうんだよ。何度も入退院してるから、そのたびにそれしてると大変だろ。だから、職場の人も見舞いにきても手ぶらでな。俺もそうしてるんだ」
そう言われては、明子としてもそれに従うしかなかった。
「木村くんから、預かってきたもの。渡さないほうがいいですか?」
暗黙のルールが判らないので、明子は素直に牧野にそれを尋ねた。
「ん? あれか。渡してやれよ。あれは、ものじゃない、気持ちだろ」
笑う牧野に、明子も嬉しそうに笑って頷いた。
病室の近くまできて、牧野が立ち止まった。
どうしたのだろうと牧野に身を向けると、牧野が「あのな」と、口を開いた。
「はい?」
「辛気くさい顔、すんな」
やや低い声で明子にそう言いおくと、牧野は何事もなかったように歩き出した。
そうして、なんも見舞いの持たないまま、教えてもらった病室を、明子は牧野とともに訪ねた。
「赤木さん。具合どうですか?」
こんにちはと、いつもと変わらぬ声で挨拶をしながら、牧野は病室に入っていった。
「ああ。牧野さん」
牧野の姿を見て、慌てて体を起こそうとする赤木を、牧野は押しとどめた。