リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「孝平に、そんなふうにポンポン小言を言う女の人、お袋以外で初めて見たよ」

肩を揺らして楽しそうに笑いながら、亮一は改めて明子に向かい直して頭を下げた。

「弟の亮一です。兄がいつもお世話になってます」
「世話になんかなってねえぞっ」
「そんなこと言う人には、もうお弁当を作ってあげませんよ」
「きたねえぞ、お前っ 弁当を盾に取るなんて卑怯だろっ」
「なにを訳の判らないことを言ってるんですか。子どもですか」
「ホントだよ。デカい図体して、中身はいつまでたってもお子さまなんだから」
「なんだとっ」
「うるさいよ、お兄ちゃん」

今ね、大切なお話してるんだから、いい子に大人しくしていてよ。
そう続けられた言葉に、「な、なんだと、このやろう、生意気だっ」と、牧野は顔を赤くしながら喚いたが、そんな兄など気にも留めない様子で、亮一は笑っていた。


(いや、なんというか……)
(いなし方というか、宥め方というか、転がし方というか、とにかく牧野さんの扱い方がね)
(なんか、牧野さんの扱い加減が、ビミョーに君島さんちっくな弟さんだわ)


君島に軽くいなされて、地団駄を踏んで喚き散らして悔しがる牧野の姿が重なり、明子はこぼれそうになった笑いを慌ててかみ殺した。
牧野のほうがおそらく年上のはずにも関わらず、なぜか亮一のほうがしっかり者の兄と言う雰囲気で、なんとも微笑ましい光景だわと、向ける眼差しを柔らかくして、明子は二人の様子を眺めていた。
明子の視線を受けとめた亮一は、やや悪戯じみた笑みを浮かべた。

「この人、この見た目で、あんがい、中身はお子さまな人でしょう」
「まあ、そうですね」

目を細くして笑っている亮一につられるように、明子は頬を緩ませて言葉を続ける。
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