リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「離婚の原因とかは、なんか考平から聞いてますか?」

伺うような口振りの亮一に、明子はこくりと頷いた。

「ええ。牧野さんが結婚していたころは、別の部署にいたんで、詳しいことは知りませんでしたけと、お付き合いするようになってから、いろいろと話してくれました」
「なんか、かなり長い間、ゴタゴタしたんでね。そのころ、ちょっと体調を崩したらしいんです。後から知ったんですけど、医者から安定剤みたいなものを、処方されていたみたいで」
「一度は、一緒に生きていくと決めた人と別れるんですから。エネルギー使い果たしちゃったんですよ。でも、今は元気はつらつですよ。ホントに」

生き生きと、会社で悪だくみしてますから。
茶化すようにそう言う明るい響きの明子の声に、亮一は「悪だくみかあ。孝平らしいなあ」と楽しそうな笑い声をあげた。

「今日は、ついてたな」

普段だったら、会えなかったもんな。
亮一は楽しげに笑いながら、そんなことを言った。

「会えなかった?」
「普段は、裏口から出入りしているんですよ。今日はたまたま裏口が使えなくて、こっち使ったんですよ」
「そうなんですか。じつは見舞いに来るの、昨日のはずだったんです。それが牧野さんの都合で今日になっちゃって」
「へえ。さすが、考平。引きがいいや」

亮一の言葉に、明子もホントですよねえと、声を上げ笑った。


(物事が進み出すときって、あんがい、こんな感じなのかしらね)


まるで、なにもかもが、約束された二人の未来に続く出来事のようだと明子は思った。

ひとしきり、笑って、明子は静かな声で亮一に話しかけた。
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