リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
そんな牧野を、慌てて引き留めようとする明子よりも先に、亮一がその背に向かい声を掛け、牧野の足を止める。
「……、なんだよ?」
億劫そうに振り返り、亮一のその声に答える牧野に、亮一は飄々とした口調で言葉を続けた。
「鍵。返せよ」
笑いながら牧野に手を差し出して、亮一はその手にある車の鍵を返せと顎で指し示し、催促した。
「それないとさ、店に戻れないって」
その言葉で、牧野はようやくその存在を思い出したように自分の手を見て、ばつの悪そうな顔で髪を掻きむしった。
「だな」
亮一のその声に落ち着きを取り戻したのか、人形のように白く凍りついていた牧野のその顔に、少しずつ、牧野らしい表情が戻ってくるのを見てとった明子は、その胸中で安堵したように息を吐いた。
「そうだ。島野さんから、なんか荷物が届いてたぞ。なんだ?」
牧野が投げ渡した鍵を受け取った亮一は、何事もなかったようの顔で運転席に回りながら、唐突に思い出したような口調で、そんなことを牧野に問いかけてきた。
「あー。酒、頼んだ」
「なんでお前の会社の連中は、どっか行くたびに、あれこれとお前に寄こすんだろうな」
「ギブにはテイクだろ。俺は仕事で返してら」
俺は優秀だからな。
そう言って得意がる牧野に、明子は「自分でそれを言いますか」と呆れた声を上げて、亮一は「まったくですよ」と明子のその言葉に頷いた。
続けられるたわいない会話に、次第にいつもの牧野に戻って行く様を見ながら、明子は改めて亮一にその目を向けて、繁々と彼を眺めた。
(心得があると言うか、なんと言うか……)
(面白い弟さんだなあ)
牧野を必要以上に、怒らせることも追い詰めることもしない亮一に、二人が過ごしてきた時間の濃密さを、明子は感じ取った。
「……、なんだよ?」
億劫そうに振り返り、亮一のその声に答える牧野に、亮一は飄々とした口調で言葉を続けた。
「鍵。返せよ」
笑いながら牧野に手を差し出して、亮一はその手にある車の鍵を返せと顎で指し示し、催促した。
「それないとさ、店に戻れないって」
その言葉で、牧野はようやくその存在を思い出したように自分の手を見て、ばつの悪そうな顔で髪を掻きむしった。
「だな」
亮一のその声に落ち着きを取り戻したのか、人形のように白く凍りついていた牧野のその顔に、少しずつ、牧野らしい表情が戻ってくるのを見てとった明子は、その胸中で安堵したように息を吐いた。
「そうだ。島野さんから、なんか荷物が届いてたぞ。なんだ?」
牧野が投げ渡した鍵を受け取った亮一は、何事もなかったようの顔で運転席に回りながら、唐突に思い出したような口調で、そんなことを牧野に問いかけてきた。
「あー。酒、頼んだ」
「なんでお前の会社の連中は、どっか行くたびに、あれこれとお前に寄こすんだろうな」
「ギブにはテイクだろ。俺は仕事で返してら」
俺は優秀だからな。
そう言って得意がる牧野に、明子は「自分でそれを言いますか」と呆れた声を上げて、亮一は「まったくですよ」と明子のその言葉に頷いた。
続けられるたわいない会話に、次第にいつもの牧野に戻って行く様を見ながら、明子は改めて亮一にその目を向けて、繁々と彼を眺めた。
(心得があると言うか、なんと言うか……)
(面白い弟さんだなあ)
牧野を必要以上に、怒らせることも追い詰めることもしない亮一に、二人が過ごしてきた時間の濃密さを、明子は感じ取った。