リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「何度も言ってるだろ。頭、使っているからだよ」

とんとんと、人差指で自分のこめかみあたりを突っつきながら、もはや口癖のようになっているその言葉を、当然のように口にした。

「毎日毎日フル回転で。いくら食っても足りねえくらい、グルグル回転してんだよ」
「私だって、使ってますよっ」
「なに言ってやがる。その脳みその半分以上は、なんちゃらかんちゃらのヒゲ小僧で埋まってるだろうが。お前の敗因は、それだそれ」

けらけらと楽しげに笑いながらもその言葉に、明子はやや怒り交じりの声で抗議した。

「ヒゲ小僧って、ひどいっ 牧野さんがヒゲを勝手に書いたくせにっ」
「うるせ」
「関ちゃんのおかげで、今度のダイエット成功しているのにっ」
「成功してんのか、ホントに?」
「……たぶん」

牧野に痛いところを突っつかれ、自信なさげな声で「おそらく、きっと」と言葉を続けるしかなかった明子に、牧野はくつくつと肩を揺らして笑った。

「まあ。俺は今のままで、じゅうぶんだけどな」

無理なことして、おっぱい小さくなっちまったら困るしな。
ケラケラと笑いながら続けられた言葉に、明子は声をひっくり返して「バ、バカッ」と牧野を罵るが、そんな明子の様子すら楽しげに眺めて、牧野は助手席のシートを倒した。

「ちょっとっ 牧野さんっ 寝ないでくださいよっ」

寝ちゃったら、外に蹴りだしますからねっ
今にも眠り込んでしまいそうな態勢に取る牧野に、明子は慌てたようにその肩に手を掛けて揺さぶった。

「寝ねーよ。腹減って、眠気もこねーよ」

うるさげに明子の手を払いながらそう言う牧野は、それでもどこか眠たげな顔に見え、明子は怪しむ目で牧野を見るしかなかった。

「二階のカフェ。テラス席が、いくつかあってさ」

話の続きださと言うように、そんなことを喋り始めた牧野に、明子は小さく頷いて見せて、先を促した。
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