リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
明子を目覚めさせた物音は、電話の着信を告げるアラーム音だった。
携帯電話に家族からの電話が入ると流れるその音に、明子は鼻を啜りながら、また、ため息を吐く。
誰が掛けてきた電話なのか。
ディスプレイを覗いて名前を確認しなくても、容易に想像がついた。
できることなら、今は、あの人と話しなどしたくなかった。
けれど、無視したところで何度でもあの人は掛けてくるに違いない。
テーブルの上に置いてある携帯電話に手を伸ばした明子は、ディスプレイに表示されている予想を裏切らない名前に、一つ、大きくも深呼吸をして気持ちを落ち着かせる。
このまま、いつものように無視してしまえばいいとそう訴える自分もいたが、出るまで何度でも掛けてくるよとそう諭す自分もいて、明子は諦めた。
おそらく、土曜の話だろう。
ならば、何度でもかけてくるに違いない。
そう思って、無視することを諦めた。
『もしもし。明子なの? お母さんだけど』
言われなくても判りますと言い返しそうになったが、それを堪えて電話をかけてきた用向きを尋ね返した。
できることなら長話はしたくなかった。
そんな気分ではなかった。
『なにしていたの? まだお仕事? もう、あなたって子は、いつ電話しても』
『ねえ、用件は、なに?』
『なにって……、土曜のことよ』
決まっているでしょうとでも言いたげな母親の声の調子に、明子は背筋を伸ばして顔を上げた。
臨戦態勢を取らないと立ち向かえないような、そんな気配が電話越しにも伝わってきた。
『ねえ、あなた、ちゃんとしたお洋服はあるの?』
「はあ?」
お洋服って、あのねと言いかけた明子の言葉を遮って電話の向こうの声は一方的に喋りたて始める。
携帯電話に家族からの電話が入ると流れるその音に、明子は鼻を啜りながら、また、ため息を吐く。
誰が掛けてきた電話なのか。
ディスプレイを覗いて名前を確認しなくても、容易に想像がついた。
できることなら、今は、あの人と話しなどしたくなかった。
けれど、無視したところで何度でもあの人は掛けてくるに違いない。
テーブルの上に置いてある携帯電話に手を伸ばした明子は、ディスプレイに表示されている予想を裏切らない名前に、一つ、大きくも深呼吸をして気持ちを落ち着かせる。
このまま、いつものように無視してしまえばいいとそう訴える自分もいたが、出るまで何度でも掛けてくるよとそう諭す自分もいて、明子は諦めた。
おそらく、土曜の話だろう。
ならば、何度でもかけてくるに違いない。
そう思って、無視することを諦めた。
『もしもし。明子なの? お母さんだけど』
言われなくても判りますと言い返しそうになったが、それを堪えて電話をかけてきた用向きを尋ね返した。
できることなら長話はしたくなかった。
そんな気分ではなかった。
『なにしていたの? まだお仕事? もう、あなたって子は、いつ電話しても』
『ねえ、用件は、なに?』
『なにって……、土曜のことよ』
決まっているでしょうとでも言いたげな母親の声の調子に、明子は背筋を伸ばして顔を上げた。
臨戦態勢を取らないと立ち向かえないような、そんな気配が電話越しにも伝わってきた。
『ねえ、あなた、ちゃんとしたお洋服はあるの?』
「はあ?」
お洋服って、あのねと言いかけた明子の言葉を遮って電話の向こうの声は一方的に喋りたて始める。