リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
着替えて、朝ご飯を食べている間に洗濯機を回して、狭いけれども日当たりは抜群にいいベランダに、洗濯物を広げて干した明子は、さてと自分に気合いを入れて、部屋を見回した。


(まずは、午前中)
(さっくりと、でも、いつもよりはしっかりと、部屋の掃除をしてしまおう)


明子は即座にそう決めた。

とにもかくにも、たくさんあるのだ。
そろそろ、このお腹をどうにかしようかなと思い立つたび、ムダに買い集めてしまったダイエット本やら、グッズやらが、これでもかと山になっていた。
しかも、すべて、志、三分の一にしてあっさりと挫折して、そのまま放り出してあった。


(それをね、まずは、発掘しないとね)
(使えるものは、使わなきゃ)
(うん)
(でもって、なんとしてでも、痩せないと)
(『文隆くん』に)
(『高杉兄弟』に)
(会うんだからね)
(むふふふふ)


一目、彼を、彼らを、見られるだけで、明子には十分だった。
それだけでも、自分は天まで舞い上がってしまうに違いないと、明子は思った。


(でも)
(もしも)
(もしも)
(目があったりしたら……)
(どうしようーっ)


そんなことを考え始めて、へにゃりと緩んでいく頬を、明子はピシャピシャと叩く。


(妄想遊びを、している場合じゃないっ)
(動けっ)
(あたしっ)


明子は自分を叱咤して、また気合いを入れ直した。
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