リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
次は、服の整理に取りかかる。

積んである服の山から、今の明子が着られる服だけと拾い集める。
それを、きちんとハンガーに掛けたり。
あるいはきれいに畳んだりして。
せっせと、作り付けのクローゼットに仕舞った。

こんなことは、普段からこまめにやっておけばいいことなのに。
それを『まあ、いいか』と、甘えて怠けて放置していた。
そんな自分に、明子はため息がでるばかりだった。

アイロンがけしたほうが、良さそうなものもあったけれど、それは後回しにして、まずは仕舞うことだけを、明子は考えた。

サイズが小さくなって、もう着ることができなくなったものの、それでも、痩せれば着られると思うと捨てることができない服を、サイズごとに仕分けてから畳んで、ボックス型の衣装ケースに、明子は詰め込んだ。
こうするつもりで買ってきたはずのに、使われることなく、ほぼ物置台と化していた衣装ケース。
それが三つも、空の状態で積んであったというその事実に、明子はがくりと肩を落としながら、ひたすら服を詰め込み続けた。

但し、二十代前半から半ばのころにかけて着ていた服は、思い切って処分しようと、明子はゴミ袋に押し込んだ。


(もう、あたしも、三十路過ぎだもんね)
(子どもっぽいものは、卒業しよ)


その中の半分くらいは、あの人とのデートに着ていった服だったりすることに、明子は処分しながら気づいた。


(吹っ切るためにもね)
(捨ててしまおうって……、誰かの歌の歌詞に、あったよね?)


そんなことを思い出して苦笑しながら、明子は服を片付け続けた。


(仕舞った服は、痩せたらさらに仕分けよう)
(とにかく、今のこの体では、着ることのできない服だもの)
(このスカートも)
(このワンピースも)
(このスーツも)
(なにもかも、今ここに、こうやって積んである物は、着られないの!)


そう自分に言って、今は着られない服を、どんどんと空の衣装ケースに詰め込んだ。

どうしても、今すぐここで、きっぱりと捨てしまうことが決意ができない。
それでも、今は邪魔なものと、明子は何度も自分に言い聞かせてて割り切った。
だから、とにかく詰め込んで、その衣裳ケースは部屋の片隅に置いた。


この時点で、すでに正午を過ぎていた。

目標の午前中は、とっくに終っていた。
けれど、そんなことに気づく暇もないまま、明子は動き続けた。
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