リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
テレビ雑誌やファッション誌は、関ちゃんがお目当てで、買ったものばかりだった。
だから、彼が載っているページを切り取ってはクリップで止めて、それを空いていた書類ケースに、ばさりばさりと放り込んでいった。

途中、明子のその手が、ある雑誌のある頁で止まった。

自分とほぼ同じ年齢の、ある女優のインタビュー記事だった。
明子の好きな女優だった。
体のラインが、くっきりと浮かびあがるドレスを纏った全身写真を、明子はうっとりとした眼差しで見つめた。


(あー)
(いつ見ても、いい女だなあ)
(けっこう、胸があるんだよね)
(腰は、きゅっとくびれてて、同じ生き物とは、思えないわー)


すらりとしなやかに伸びた長い脚は、ほどよく、肉感的でかつ健康的で。
けれど、少女にはない大人の女性の色香もあって。


(いいなあ)
(いい女だなあ)


すっかりオヤジと化した目線で、締まりのないだらしない顔で、でへへと笑って女優の写真を眺めていることなど気付きもせず、明子はその写真をしばらくの間、瞬きも忘れて眺めた。
そして、なんとなく、捨てるには忍びなくなり、その頁も切り取って残した。

いつか、こんなふうになれたらいいなと、そんな羨望のまなざしで写真を眺めながら、大切にしまった。
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