リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「なんで、いつも、こんなに凝ってるんですかね、この肩は」

困った肩ですねと、ため息混じりにこぼしながら、明子は牧野の肩を叩く。

昔、徹夜明けの朝。
二人きりの社内で肩を頼むと言われると、仕方がないなあと言いながら、こうやって牧野の肩を叩いていたことを、明子は思い出していた。

「お仕事を、いっぱーい、しているからだよ」

凝ってる理由をしゃあしゃあと告げる牧野に、はいはいと軽いノリで、明子は返事をした。

「えい、やー、とー」

こりゃーっと、妙なかけ声をかけながら肩を叩き続ける明子に、牧野は、くーっ、脳天まで響くなと、気持ちよさそうに目を閉じる。

「で。訂正その3」

明子は握っていた拳を開いて、牧野の肩を包み込むようにして、ゆっくりと揉みほぐしていく。

「は? 訂正?」

なんのことですかと訝しがる明子に、牧野は目を閉じたまま、ゆったりとした口調で話を続けた。

「プレゼンは、お前が勝手に始めたんだ。きっちり吸い上げて仕切ってこいとは言ったけどな、プレゼンまでして丸めてこいとは、俺は言ってねえ」

牧野の正論に、きーっと悔しそうに歯噛みしながら、明子は牧野の首を絞める真似をした。
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