リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「牧野さん。女の子、脅しちゃダメ。お腹空いてるから、そんな怖い顔よ。はい、食べて食べて」

おいしいもの食べれば、牧野さんも、ご機嫌になるよ。はいはい。
そう言いながら、見るからに辛そうなスンドゥブチゲと、きのこ類がたっぷり使われたブルコギ、具沢山のキムパッを、注文を取りに来た女店主はテーブルにドンと置き並べた。
牧野はバツの悪そうな顔で、女性を見上げる。

「脅してないって」
「ウソ。今、怖い顔してたよ。大きな声、出してたよ。女の子に、そんなことしちゃダメ。もてないよ」

牧野さん、ダメ。初めて女の人連れてきて、なんでケンカ。ダメ。ダメ。
牧野を叱り続ける女性に、牧野はケンカじゃないしと、子どものように反論する。

「ただの話し合い。ケンカじゃないって」
「ウソ。怖かったよ。声、優しくなかったよ、全然。優しさないとダメ」
「ここは日本だって。韓国じゃないの」
「日本の男の人、そこがダメよ。ダメ。どうして、女の子には優しくするの、はずかしい?」
「判ったって。怖い顔しないし、大声も出さないから、飯を食わせて。そこでぐちゃぐちゃ言われたら、食えねえって」

降参降参と手を挙げて言いながら、食おうぜと、牧野は明子に笑ってみせた。
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