リスタート ～最後の恋を始めよう～ 【前編】

「火、止めといたぞ」

頭の上からのその声に、明子は拗ねながら怒った顔で牧野を見上げた。
胸元まで赤くした明子の姿に、牧野の目が一瞬細くなる。

すっと伸びてきた牧野の手に、明子は思わず首を竦める。
大きな牧野の手は、明子を宥めるように頭をポンポンと、軽く叩いた。

「悪かったって。帰ってから気付いて、明日、ヘンに気まずくさせるより、言っといたほうがいいかなって」
「牧野さんが、玄関で寝ちゃったりするからですよっ」

牧野の手を払い、明子は目を吊り上げて牧野を睨みつける。

「だから、お洗濯もできなくて、こんな」
「そんな顔で怒ったって怖くねえよ」

タコみたいだぞ。
笑みが浮かんだ顔で牧野はそんなことを言いながら、人差し指で明子の頬を軽く突っついた。
うるさい、うるさいと、明子は更に拗ねながら牧野を睨みつける。

「だから、悪かったって」