リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
派手に、脱ぎ散らかしておいたわけではないけれど、一番上においてあるものは、紛れもなく、昨日、明子が身につけていた下着だ。
上下セットになっている、濃紺でレースがたっぷりと施されたブラジャーとショーツだ。


(……な、生々しすぎる)
(これは、生々しすぎるでしょっ)


顔から火が出そうなほど、明子の顔は真っ赤に染まり火照っていた。耳朶まで、真っ赤だった。
今の自分は茹で蛸状態だということは、鏡で確認するまでもなく、明子にも判った。
それくらい、恥ずかしくてたまらなかった。


(牧野のバカっ)
(ドア塞ぐからっ)
(バカっ)
(バカっ)
(バカっ)
(バカーッ)


そんなふうに、天下泰平に爆睡していた大男に当り散らしながら、とりあえず、カゴの中のものは全てドラム式洗濯機の中に放り込んで、外から見えないようにタオルを広げかけた。


(キレイなやつで、よかった)
(いや、そうじゃなくて)
(そうじゃなくてっ)
(もう)
(もう)
(もうっ)
(ばかっ)
(いやーっ)


腰が抜けたように座りこんだまま、動けなくなった明子は、ちょっとしたパニック状態で、洗濯機にしがみついていた。

そんな明子に、ようやく、洗面所の中を覗きこんだ牧野が、声をかけてきた。
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