リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
-秘密だよ
アパート前で車は止まり、逃げるように降りようとした明子を引き止めて、またひっそりと囁いた、島野の言葉を思い出す。
低い、あの声を思い出す。
-牧野は鼻がいいから、嗅ぎ付けられないようにね。
-二人だけの秘密だよ。
そんなことを言いながら「まあ、バレたらバレたで、それも楽しそうだけどね」と、悪びれることもなく、くつくつと笑っていた顔が癪に障る。
(こんなこと)
(言われなくても、隠すわよ)
(笑い話にだって、できないもの)
鼻を皺寄せて、明子は心に浮かんだ島野の顔に、べーっと舌を出す。
パタパタと、手で仰ぐようにして、また火照りだしそうな頬に、風を当てる。
(キスなんて、いつ以来かな)
(別れてからは、一度もないし)
無意識の唇を撫でている自分に気づき、明子はペシペシと、頬を叩く。
考えない。
もう、考えない。
明子は呪文のように、そう唱えた。
テレビの中の会話が、ようやく、明子の耳に入ってきた。
アパート前で車は止まり、逃げるように降りようとした明子を引き止めて、またひっそりと囁いた、島野の言葉を思い出す。
低い、あの声を思い出す。
-牧野は鼻がいいから、嗅ぎ付けられないようにね。
-二人だけの秘密だよ。
そんなことを言いながら「まあ、バレたらバレたで、それも楽しそうだけどね」と、悪びれることもなく、くつくつと笑っていた顔が癪に障る。
(こんなこと)
(言われなくても、隠すわよ)
(笑い話にだって、できないもの)
鼻を皺寄せて、明子は心に浮かんだ島野の顔に、べーっと舌を出す。
パタパタと、手で仰ぐようにして、また火照りだしそうな頬に、風を当てる。
(キスなんて、いつ以来かな)
(別れてからは、一度もないし)
無意識の唇を撫でている自分に気づき、明子はペシペシと、頬を叩く。
考えない。
もう、考えない。
明子は呪文のように、そう唱えた。
テレビの中の会話が、ようやく、明子の耳に入ってきた。