リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「なんていうのかな。貰った仕事は、どんどん前倒しで片付けていくし、なにも仕事がなくて手が空けば、すぐ次の仕事を自分から貰いにいくし、それでも仕事がないと、遅れている人の仕事を手伝ったり。誰に言われなくても、自分からそうやって動いていたでしょ」
「そんなこと、みんな、していましたよ?」

不思議がる明子を、判ってないなあと恵美は笑う。

「それは、小杉さんがそういう人だからよ。類は友をって言うでしょ。あれってほんとだと思うわ。似すぎていて嫌気が差すこともあるけど、やっぱり似た者同士って、自然と集まるものなんじゃない」

恵美の言葉に、それでも明子は怪訝な顔で首を捻り続けた。

「小杉さんにとって当たり前でも、それができない人も沢山いるのよ」

明子は、ますます眉間に皺が寄っていくような思いになった。

「人の指示がないと、動けない人っているの。小杉さんには信じられないかもしれないけど。最近は、特に増えたなあって思うわ。今、あの子たちに言われたでしょ。仕事なんて言われたことだけをやっていればいいのにって。アレね、本気で言っているのよ、あの子たちは。自分で考えて、自分から行動するよりも、人に指示されて、指示通りの仕事だけしていれば十分って、そんなふうに思っているみたいな子。自分で考えるなんて面倒。自分から動いて、大変な思いなんてしたくない。出世なんてしなくてもいい。ほどほどに働いて、そこそこの暮らししていければそれでじゅうぷん。楽なほう楽なほう。そんな考え方している子がね」

まあ、昔もいたけどね、そういう人は。
誰か思い浮かぶ人物像でもいるのか、最後の言葉は少しだけ、辛辣な色があった。
松山が吉田のことを、自分で考えられない人と、そう言っていたことを明子は思い出した。
昨日はあっさりと聞き流してしまった言葉だけれど、言われてみれば、吉田がまさにそういうタイプだと、明子も思い至った。
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