リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
ドアを閉める寸前。
ガタンと、イスがひっくり返るような音がして、恵美に名を呼ばれた二人が、明子を押しのけるようにしてロッカールームを飛び出していった。
さすがに、昨日の今日で、またカミナリを落とされるようなことをしでかしたのはマズいと、それくらいの判断できたらしい。


(そんなこと、言われなくても判るでしょうに)
(叱られることくらい、覚悟していたんじゃないの?)


バタバタを駆けていくその後ろ姿に、明子はまた呆れ混じりのため息を零して、恵美に並んだ。

「助かりました。ありがとうございます」

恵美とそう告げると、私は牧野課長に頼まれただけだしと、恵美は笑った。

「なんだか、もう、あの子たちが理解できなくて」

明子の愚痴に、恵美がくすりと笑う。

「そうね。小杉さんは特に理解できないかもね」

ああいう子たちは。
苦笑いのような笑みを浮かべてのその言葉に、明子は眉を寄せた。

「どういう意味ですか? 私にはって」
「あー。ごめん。変な言い方しちゃったかな」

なんて言えばいいのかなあ。
明子には正しく伝えるために、恵美は思案顔で言葉を探し始めた。

「小杉さんって、新人のころから、あまり人を頼らない子だったでしょ」

恵美の言葉に、牧野にも同じ事を言われたことを思い出し、明子はなんと答えればよいのか判らず、ただ情けなさそうに眉尻を下げた。

「私って、やっぱり、そんなんでしたか?」

みなに口を揃えてそう言われると、やはり自分は可愛げないイヤな女の子なのかもと、明子はやや肩を落とした項垂れた。

「悪くとらないでね。しっかりしているというか……そうね、自立していたと思う」

昔の明子を思い出すように空を見つめていた恵美は、そう言葉を続けた。
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