リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「そうよねえ。でも、あの子たちは、結婚相手探しているのよ、毎日。会社で見つからないなら、客先で。必至になって探しているのよ」

だから、毎日すごいじゃない。服もメイクも。
その言葉に、美咲を含めたあの七人の姿を思い浮かべた明子は、乾いたため息を吐き出した。


(原田さん)
(ホントにあの格好で、客先に行くつもりだったんだよね?)
(まあ、ふわふわらぶりーなのは目をつぶるわ)
(百歩、いやいや、千歩譲って、目を瞑る)
(でもねえ、あのスカート丈は……)
(どうよ?)


幸恵のことを考え出したら、明子の口から愚痴が山となって出てきそうになった。

「まあ、お嬢さまは違うかもしれないけど。ほかの子たちはね、ものすごい贅沢なんてできなくてもいいから、働かないで、毎日、家にいて。ときどき、友だちと映画を見に行ったり、ランチに行ったり、買い物したり。指先はいつもキレイにネイルをして、たまにはご褒美のエステに行って。それから、習い事のひとつでもして。そんな生活をさせてくれれば、それで十分。そんな人いないかなあって、探しているのよ」

恵美の言葉に頭痛を覚えつつ「はあ、そうですか」と、明子は力ない声で頷いた。

「まあ、価値観を否定するつもりはありませんから。それがお望みの結婚生活なら、どうぞご自由にって感じですけど」

仕事を放り出しているような子、相手にするような男性社員、ウチにいるかなと、明子は首を捻って考えた。
けれど、美咲たちのことが判らないように、彼女たちと同世代の男の子たちの中にも、自分には理解できない子たちがいるかもしれない。現に昨日も、余計なことをと明子を詰った者たちがいた。そんな子たちの中には、彼女たちを歓迎する子もいるかもしれない。
いや。自分と同世代の男性社員の中にだって、自分が知らないだけで、彼女たちを可愛いと思っている者はいるかもしれない。


(あんがい、すぐにでも結婚しちゃうのかもね、ああいう子たちのほうが)
(少なくとも、あたしなんかよりは、女の子らしくて可愛いものね)


いつか、得意げな顔の幸恵から寿退職の挨拶をされている自分の姿を想像した明子は、気持ち肩を落として息を吐いた。

「私ね。年内で、会社を辞めることになったの」
「え?」

唐突過ぎる恵美の言葉に、明子は足を止めてしまった。
そんな明子に、恵美はうふふと笑いかける。

「二人目。できてね」

恵美はそう言って、幸せそうな顔でお腹を撫でた。
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