リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「昨日ね。家で倒れたそうでね」
「倒れた?」
さっと、貧血を起こしたように、明子の顔から血の気が引いていく。
「赤木さん、もともと、ちょっと心臓が悪くてね。なんか、昨日の夜、苦しくなったみたいで。そのまま病院に搬送されたんだ。命に別状はないらしいんだけど、今回はいつもよりちょっと、症状が重いらしくてね」
しばらく、入院することになりそうなんだ。
ぽつぽつと、大山から静かにそう聞かされ、明子は安堵しながらも、得体の知れない不安で胸が一杯になってきた。
「先週、ちょくちょく、小杉さんに電話していたでしょ。ごめんね、迷惑かけてよね。なんか、予感があったのかなあ。赤木さんね、生きていれば、二十七歳、二十八歳くらいになる娘さんがいたんだ、じつは。昭子(あきこ)ちゃんっていう娘さん。昭和の昭に子どもの子で昭子。小杉さんとは字が違うけど、なんか、声が似ているそうでね、亡くなった娘さんと。だから、ついつい、なにかあるとすぐに小杉さんに電話しちゃってね。赤木さんも、ホントは判っていたんだ。こんな話は営業にすることだとか、こんなこと、秋川くんに聞けば判るとか、ね。でも、なんかね、小杉さんと喋りたかったみたいでね。昨日、電話がきたらよろこんでいたんだよ、アレでも。無愛想な声だったろうけど」
淡々と続く大山の言葉を、黙したまま聞いていた明子は、その視線を足元に落とした。
(なんで、昨日、来てやらなかったんだろ)
(金曜だって、電話しようと思えばできたのに)
(あんな、くだらないケンカをしている時間あったら、来てあげればよかった)
言葉が出ない。目頭が熱い。油断すると、なにかが溢れ出てしまいそうだった。
命は重い。
けれど、命は軽い。
ちょっとしたことで。
簡単に、吹き飛ぶ。
簡単に、消えてしまう。
命は……。
儚く、脆い。
二度と目を開かなかった祖父のその顔が、明子の脳裏に浮かんだ。
どうしようもない後悔で、胸が苦しい。
「倒れた?」
さっと、貧血を起こしたように、明子の顔から血の気が引いていく。
「赤木さん、もともと、ちょっと心臓が悪くてね。なんか、昨日の夜、苦しくなったみたいで。そのまま病院に搬送されたんだ。命に別状はないらしいんだけど、今回はいつもよりちょっと、症状が重いらしくてね」
しばらく、入院することになりそうなんだ。
ぽつぽつと、大山から静かにそう聞かされ、明子は安堵しながらも、得体の知れない不安で胸が一杯になってきた。
「先週、ちょくちょく、小杉さんに電話していたでしょ。ごめんね、迷惑かけてよね。なんか、予感があったのかなあ。赤木さんね、生きていれば、二十七歳、二十八歳くらいになる娘さんがいたんだ、じつは。昭子(あきこ)ちゃんっていう娘さん。昭和の昭に子どもの子で昭子。小杉さんとは字が違うけど、なんか、声が似ているそうでね、亡くなった娘さんと。だから、ついつい、なにかあるとすぐに小杉さんに電話しちゃってね。赤木さんも、ホントは判っていたんだ。こんな話は営業にすることだとか、こんなこと、秋川くんに聞けば判るとか、ね。でも、なんかね、小杉さんと喋りたかったみたいでね。昨日、電話がきたらよろこんでいたんだよ、アレでも。無愛想な声だったろうけど」
淡々と続く大山の言葉を、黙したまま聞いていた明子は、その視線を足元に落とした。
(なんで、昨日、来てやらなかったんだろ)
(金曜だって、電話しようと思えばできたのに)
(あんな、くだらないケンカをしている時間あったら、来てあげればよかった)
言葉が出ない。目頭が熱い。油断すると、なにかが溢れ出てしまいそうだった。
命は重い。
けれど、命は軽い。
ちょっとしたことで。
簡単に、吹き飛ぶ。
簡単に、消えてしまう。
命は……。
儚く、脆い。
二度と目を開かなかった祖父のその顔が、明子の脳裏に浮かんだ。
どうしようもない後悔で、胸が苦しい。