リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
帰社する途中。
いつの間にか、牧野が明子の机の上に残していったメモにある店に立ち寄り、そのメモに書いてあるとおり、天丼弁当を買い求めた。


  お前の分も買って来い。


紙幣の入った封筒とともに置いてあったメモのミミズは、明子にそう言っていたので、遠慮することなく、一番高いものを頼んだ。


(で?)
(なんで)
(三人分なんだろ?)
(誰が食べるの?)
(一つは私の分で、一つは小林さん、かな?)
(で? あとは?)


三人目の該当者が思い浮かばす、不思議に思いながら会社に戻ると、すでに、午前の就業時刻は残り三十分ほどになっていた。
そして、いるはずのない牧野の姿も、すでにあった。
首を傾げながら近づき「早いですね」と言うより先に「くさっ」と言う言葉が、明子の口から吐いて出た。
小林が天を仰いで、仰け反るようにして笑い出した。

「タバコくさっ 朝より強烈ですよっ」
「うるせっ 本日、すでに残り三本で二箱目終了だ」
「吸い過ぎですよっ」
「しょうがねえだろっ 吸わなきゃやってらんねえ事態だっ」
「……、まさか、今日もドタキャン? とか?」

まさかですよねーと乾いた笑いをこぼす明子に、その通りだよっと、牧野は苦虫を潰したような顔で吐き捨てた。

「くそっ 久しぶりに、本気で腹が立ってきたぞ」

思い出したら、また苛立ってきたのか、牧野は腰を浮かしてタバコの箱に手を伸ばした。
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