リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
お弁当を没収してやるっと喚く明子など気にも留めず、牧野は幸恵を見ながらその言葉を続けていく。
「その条件が飲めるなら、俺から君島課長には話は通してやる。野木主任にも、もちろん沼田にも、質問はなしだ。聞きたいことは小杉主任に聞け。二人に一々そうやって聞いていたら、けっきょくは、二人の仕事が増えるだけだ。そうだろ。もともと、小杉主任に割り当てられている仕事だ。内容は把握してる。できた資料のチェックも、小杉主任にしてもらえ」
その条件、のめるか?
牧野にそう尋ねられ、幸恵の目がおどおどと泳ぐ。どうしたらいいのか、自分では判断できないようだった。
「それがイヤなら、今日の午後からは、上で坂下たちと一緒に仕事しろ。そっちが片付くまで、こっちには顔も出さなくていい」
好きなほうを選べと言われ、幸恵は長い逡巡のあと「土建屋の仕事を、やらせてください」と、小さな声で答えた。
「判った。小杉主任。そう言うことだから、頼むな」
すでに、頬をパンパンに膨らませて牧野に背を向けていた明子は、ふんっと、鼻から荒々しい息を吹き出すと、相撲の突き出しのようポーズを取って「どすこいっ」と、奇妙な返事を牧野に返した。
笹島の豪快な笑い声が室内に響いた。
小林がひっくり返りそうな勢いで笑い出した。
「久しぶりに聞いたな。小杉のどすこい。気合注入したか」
「やべー。あっこちゃんのどすこいがでちまったよ。最強呪文唱えちまった」
笹島と小林の言葉を聞いて、明子は肩越しにちらりと牧野を見ると、牧野は膝から崩れ落ちて笑っていた。
(牧野メッ)
(また、たばかったわねっ)
メラメラと、真っ赤な怒りの炎を宿した瞳で、明子は牧野を睨みつけたが、牧野は立ち上がると、からりとした口調で「やっと、昼飯の時間だ」と言った。
もう、この件は牧野の中では片が付いた話になっていることに、明子はまた頬を膨らませる。
牧野の言葉に、みな、わらわらと午前の作業を切り上げて、席を立った。
その喧噪の中、幸恵は想定外の展開に困り果てているような顔で、立ちすくんでいた。
「その条件が飲めるなら、俺から君島課長には話は通してやる。野木主任にも、もちろん沼田にも、質問はなしだ。聞きたいことは小杉主任に聞け。二人に一々そうやって聞いていたら、けっきょくは、二人の仕事が増えるだけだ。そうだろ。もともと、小杉主任に割り当てられている仕事だ。内容は把握してる。できた資料のチェックも、小杉主任にしてもらえ」
その条件、のめるか?
牧野にそう尋ねられ、幸恵の目がおどおどと泳ぐ。どうしたらいいのか、自分では判断できないようだった。
「それがイヤなら、今日の午後からは、上で坂下たちと一緒に仕事しろ。そっちが片付くまで、こっちには顔も出さなくていい」
好きなほうを選べと言われ、幸恵は長い逡巡のあと「土建屋の仕事を、やらせてください」と、小さな声で答えた。
「判った。小杉主任。そう言うことだから、頼むな」
すでに、頬をパンパンに膨らませて牧野に背を向けていた明子は、ふんっと、鼻から荒々しい息を吹き出すと、相撲の突き出しのようポーズを取って「どすこいっ」と、奇妙な返事を牧野に返した。
笹島の豪快な笑い声が室内に響いた。
小林がひっくり返りそうな勢いで笑い出した。
「久しぶりに聞いたな。小杉のどすこい。気合注入したか」
「やべー。あっこちゃんのどすこいがでちまったよ。最強呪文唱えちまった」
笹島と小林の言葉を聞いて、明子は肩越しにちらりと牧野を見ると、牧野は膝から崩れ落ちて笑っていた。
(牧野メッ)
(また、たばかったわねっ)
メラメラと、真っ赤な怒りの炎を宿した瞳で、明子は牧野を睨みつけたが、牧野は立ち上がると、からりとした口調で「やっと、昼飯の時間だ」と言った。
もう、この件は牧野の中では片が付いた話になっていることに、明子はまた頬を膨らませる。
牧野の言葉に、みな、わらわらと午前の作業を切り上げて、席を立った。
その喧噪の中、幸恵は想定外の展開に困り果てているような顔で、立ちすくんでいた。