リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
いつも松山が座る場所に小林が座り、明子と同じ昼食を取っていた。
木村と沼田の姿は、まだなかった。
明子が会議室に入ろうとしていたときには、沼田はまだ、野木と顔を付き合わせてなにかを話をしていた。
一緒に給湯室に行った木村は、そこでよその部署の同期社員たちに自身の結婚について尋ねられて盛り上がっていたので、置いてきた。
木村のことだ。
まだわいわいと、彼らと話し込んでいのかもしれない。
「うまいな」
「高給取りの課長様の奢りです。いっちばん、高いやつ買ってきました」
「わはは。さすが、小杉だ。容赦がねえな」
「容赦なんてしませんよ。あんな極悪非道な上司のお金なんて、あるだけ使って、美味しいものを食べますよ」
ぷんぷんと、まだ膨れた顔のまま、つんと鼻を尖らせている明子に、小林も苦笑するしかなかった。
件の上司は、そんな会話など聞こえていないかのような満足顔で、最高級の天丼弁当を頬張っていた。
「なんか、最近の私、ぜんぜん、自分の仕事に集中できないんですけど、どうしてでしょう?」
「さあなあ。ひじょーっに困ったことに、知らぬところでなにやら密談を交わされて、直属の上司をすっ飛ばした指令が飛んで、全部、事後承諾なんでなあ」
「そこは謝ります。すいません」
牧野が顔を上げ、小林にそう告げる。告げたものの、その声には全く反省の色はなかった。
「小杉。明日、定時であがれるか?」
「無理ですっ」
ぷいっと、さらにそっぽを向いて、つっけんどんに言い返す明子に、牧野は面倒くせえなとぼやく。
「赤木さんのとこ、見舞いに行くから、一緒に来い」
明子の箸がぴたりと止まり、じろりと牧野を睨んだ。
(ずるいっ)
(ずるい、ずるい、ずるい、ずるい、ずるい)
(ずるいーっ)
口には出さず、胸の中でそう喚き続けている明子に、牧野は飯が不味くなるから文句は後にしろよと言って、相手にしようとしなかった。
木村と沼田の姿は、まだなかった。
明子が会議室に入ろうとしていたときには、沼田はまだ、野木と顔を付き合わせてなにかを話をしていた。
一緒に給湯室に行った木村は、そこでよその部署の同期社員たちに自身の結婚について尋ねられて盛り上がっていたので、置いてきた。
木村のことだ。
まだわいわいと、彼らと話し込んでいのかもしれない。
「うまいな」
「高給取りの課長様の奢りです。いっちばん、高いやつ買ってきました」
「わはは。さすが、小杉だ。容赦がねえな」
「容赦なんてしませんよ。あんな極悪非道な上司のお金なんて、あるだけ使って、美味しいものを食べますよ」
ぷんぷんと、まだ膨れた顔のまま、つんと鼻を尖らせている明子に、小林も苦笑するしかなかった。
件の上司は、そんな会話など聞こえていないかのような満足顔で、最高級の天丼弁当を頬張っていた。
「なんか、最近の私、ぜんぜん、自分の仕事に集中できないんですけど、どうしてでしょう?」
「さあなあ。ひじょーっに困ったことに、知らぬところでなにやら密談を交わされて、直属の上司をすっ飛ばした指令が飛んで、全部、事後承諾なんでなあ」
「そこは謝ります。すいません」
牧野が顔を上げ、小林にそう告げる。告げたものの、その声には全く反省の色はなかった。
「小杉。明日、定時であがれるか?」
「無理ですっ」
ぷいっと、さらにそっぽを向いて、つっけんどんに言い返す明子に、牧野は面倒くせえなとぼやく。
「赤木さんのとこ、見舞いに行くから、一緒に来い」
明子の箸がぴたりと止まり、じろりと牧野を睨んだ。
(ずるいっ)
(ずるい、ずるい、ずるい、ずるい、ずるい)
(ずるいーっ)
口には出さず、胸の中でそう喚き続けている明子に、牧野は飯が不味くなるから文句は後にしろよと言って、相手にしようとしなかった。