リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「小杉主任は」

ややあって、牧野が言葉を選ぶように、ゆっくりと、神妙な面持ちで口を開いた。

「営業にいたときでも、運用にいたときでもそうなんですが、人を育てることが巧いという評価を得ています。沼田だって、今回のことで、本部長にあれなら大丈夫だと言わせるところまで引き上げました。だから、原田のことも頼みたいんです」
「それは、沼田くん自身に、頑張りたいという気持ちがあったからです。目をかけてくれている君島さんのために、一人前になりたいって気持ちがあったから、だから、それを後押しする手伝いをしただけです」

牧野の言葉に、だから自分の力ではありませんと、明子は静かに反論した。

「原田たちも、どうにかならないか?」

食い下がる牧野に、小林ももういいじゃないかと吐き捨てた。

「君島課長が、あれだけやってもダメなんですよ。もう、切り捨てていいでしょう。君島課長も、もういいと諦めたんですから」

もう、邪魔だよ、あいつらと顔を顰める小林に、牧野はむずかる子どものように言い募った。

「切り捨てるのは簡単だし、正直、あいつらがどうなろうと、どうでもいいんですよ、俺だって。ただ、君島さんにその累が及ぶのはイヤなんだよ」

牧野のその言葉に、明子は目をぱちくりとさせ、牧野をマジマジと見た。小林は言葉の意味を理解したらしく、もうそんな話まで出てるのかと呻くように言いながら、額に手を当て項垂れた。

「累が及ぶって」

不安げな顔で牧野を目を向けた明子に、牧野はなにかに腹を立てているような口調で説明した。
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