リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
そんなやりとりを聞きながら、明子は頭を抱え続けていた。


(そんなの、ヤダッ)
(ぜったい、ヤダッ)
(なんで?)
(なんで、君島さんの責任になるのよっ)
(ヤダッ)
(ヤダッ)
(ヤダッ)
(ぜったい、ヤダッ)


パンクして爆発しそうな頭を抱えたまま、でも、どうしたらいいのか判らないと、明子は消え入りそうな声でぞう弱音を零した。

「小杉。考えすぎるな」

トントンと、明子の弱々しい呟きに、子どもをあやす父親の手で、小林は明子の背をまた撫で叩いた。

「どすこいって最強呪文、唱えたろうよ」

どうにかなるって。いつも、どうにかしてきただろ。
簡単なことではないと判っていても、敢えて気楽な口調で小林は明子にそう言い聞かせた。

「あ。それ。その最強呪文ってなんですか、それ」

珍しく沈黙を続けていた木村が、昼前の会話を思い出したように、好奇心丸出しの顔で小林に尋ねた。
小林はわははと、楽しそうに笑い出す。

「新人のころからな、大変な仕事を牧野から押し付けられると、そうやって気合い入れるんだよ、このお嬢さんは。で、なんとかしちまうんだよ、大変な仕事も」
「そんなんじゃないですよ」

気合いなんか入れてませんよ。
小林の言葉に「へえ、すごいなあ」と感心する木村の言葉に被せるように、明子は否定の言葉を口にした。
いったい何を言っているのだと驚いたような顔で、明子は小林を見ていた。

「あれは、牧野さんが」
「俺がなんだよ?」

じろりと睨みつけてくる牧野に、明子は怯むものかと言い放った。
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