リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「そこまでバカだっか、あいつ」

小林のその推論に、木村は甲高い声を上げて額に手を当てると、がくりと肩を落とした。
彼女とは同期なだけに、情けなさも一層募るのだろう。
沼田も隣で呆気にとられたようなぽかんとした顔で、小林を見ている。
お茶の飲んでいた牧野も、さすがにその言葉には、少しだけむせ返っていた。
そんな小林に、明子だけはまだ首を捻って考え込んでいた。
ちらりと木村と沼田を見て「ごめん、ちょっと失礼なことを言うね」とそう前置きをして、小林に疑問を投げ掛けてみた。

「でも、あの子たち、沼田くんや木村くんのこと、あんまり良いようには」
「沼田に関しちゃ、お互い、けん制してたんじゃねえのか? 今までは。狙ってないように見せかけといて、実はみたいな。まあ、原田はここ最近かなり露骨だったけどな。野々村あたりは、本部長の目に留まったことを昨日聞いて、狙い定めたのかもしれないし。俺だって判らんよ、あいつらの思惑までは」
「パパー。娘はお子ちゃまで、女同士の駆け引きが判りませーん」

小林の言葉に、また頭を抱えるようにして項垂れた明子に、小林は「まっすぐないい子に育ったなあ」と、けらけら笑いながら頭をなでで誉めそやした。

「課長に逆らってまで、そんなことやらかしたから、必死だったんじゃねえのか、昼休み」

沼田。悪いこと言わねえから、気がないなら相手にするなよ。
小林が念を入れるように、沼田にそう釘を刺す。沼田も、当然のようにそれに大きく頷いた。

「木村もな」
「僕なんか、眼中ないでしょ」
「判らねえよ。あの連中は。酒なんか飲まされてホテル連れ込まれたら、アウトだからな」
「女の子じゃないですよ」

苦笑する木村に、小林が今どきの女を舐めるなよと片頬でにたりと笑いながら、若い二人に言い聞かせる。
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