リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「小杉主任。頭、痛くなりませんか?」
川田が「ご愁傷様です」という言葉を添えて、小声で明子にそう尋ねる。
「痛いです。もう……、ズキズキしてます」
「僕は耳が痛いですー。耳栓が欲しいですー」
「だよね。ごめんねえ。ここでこんなことをいつまでもしてたら、煩いよね」
ぐったりとしている木村を見て「場所を変えたほうがいいかなあ、会議室を借りようかなあ」とこぼす明子に「いや、ここにいてください」と木村は言い縋る。
川田も「下手にどこかに篭ると、もっと面倒になりますよ」と、明子を止める。
「ここにいてくれないと、僕が困ります。また叫びますよ。僕のこともかまってくださーいって」
「部屋の真ん中で? 困った子ねえ」
「判りませんを叫ぶより、マシじゃないですか」
「まあ、ね。判りませんは禁句にしましょうキャンペーンを、社をあげて展開したいわ、私」
木村とそんなやりとりをしている明子を見て、小林がまだ余裕あんだなと、感心したように笑った。
牧野は席は空席だった。
午後になってすぐ、林田に呼ばれて行った。
(けっきょく、お助けマンなんていないんだから、もう)
小さく、ため息を吐く。
胃の痛みは増していく一方だった。
(自分では考えられない、自分から動けない、かあ)
(これも……、時代っていうものなのかしらねえ)
(今どきは、これしはこれで、しかたないのかしらね)
そんなことを考え、いやいや、そんなことはないと、明子はその考えを改めた。
木村も、渡辺も。
幸恵とは年が近いであろう紀子だって。
みんな、ちゃんとやっている。
時代だの、今どきだの、そんな言葉で括ってしまったら、真面目に頑張っている彼らに失礼だと、明子は自分を窘めた。
けれど、今の幸恵を、どうしたらいいものかしらと考え出すと、またため息が出た。
間違いなく、今のままでは土建会社の作業はどんどん遅れてしまう。
今の有様では、幸恵は戦力としてカウントできない。
本来なら明子に割り当てられていた作業は、形の上では全て幸恵の作業となっている。
しかし、このままでは、けっきょく、自分でやることになるだろう。
幸恵を指導しているこの時間全てが、無駄と化す。
とんでない手間だ。
ため息が、止まらなかった。
川田が「ご愁傷様です」という言葉を添えて、小声で明子にそう尋ねる。
「痛いです。もう……、ズキズキしてます」
「僕は耳が痛いですー。耳栓が欲しいですー」
「だよね。ごめんねえ。ここでこんなことをいつまでもしてたら、煩いよね」
ぐったりとしている木村を見て「場所を変えたほうがいいかなあ、会議室を借りようかなあ」とこぼす明子に「いや、ここにいてください」と木村は言い縋る。
川田も「下手にどこかに篭ると、もっと面倒になりますよ」と、明子を止める。
「ここにいてくれないと、僕が困ります。また叫びますよ。僕のこともかまってくださーいって」
「部屋の真ん中で? 困った子ねえ」
「判りませんを叫ぶより、マシじゃないですか」
「まあ、ね。判りませんは禁句にしましょうキャンペーンを、社をあげて展開したいわ、私」
木村とそんなやりとりをしている明子を見て、小林がまだ余裕あんだなと、感心したように笑った。
牧野は席は空席だった。
午後になってすぐ、林田に呼ばれて行った。
(けっきょく、お助けマンなんていないんだから、もう)
小さく、ため息を吐く。
胃の痛みは増していく一方だった。
(自分では考えられない、自分から動けない、かあ)
(これも……、時代っていうものなのかしらねえ)
(今どきは、これしはこれで、しかたないのかしらね)
そんなことを考え、いやいや、そんなことはないと、明子はその考えを改めた。
木村も、渡辺も。
幸恵とは年が近いであろう紀子だって。
みんな、ちゃんとやっている。
時代だの、今どきだの、そんな言葉で括ってしまったら、真面目に頑張っている彼らに失礼だと、明子は自分を窘めた。
けれど、今の幸恵を、どうしたらいいものかしらと考え出すと、またため息が出た。
間違いなく、今のままでは土建会社の作業はどんどん遅れてしまう。
今の有様では、幸恵は戦力としてカウントできない。
本来なら明子に割り当てられていた作業は、形の上では全て幸恵の作業となっている。
しかし、このままでは、けっきょく、自分でやることになるだろう。
幸恵を指導しているこの時間全てが、無駄と化す。
とんでない手間だ。
ため息が、止まらなかった。