リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
途中、いつまでも戻ってこない幸恵を探してみたが、姿が見えず、気に掛けながらも仕事をしていると、牧野が疲れた顔で戻ってきた。
牧野はなにも言わずどさりと座ると「小林係長。すいませんが、三時ごろから出かけます」と、小林の背を見ながら、そう声をかけた。

「どちらに?」
「松山さんのところです」

振り向きもせず、さらりとそう尋ねた小林は、牧野からの答えに思わず手を止め振り返った。

「なにか……、トラブル、ですか?」
「いや、今回の件で。ちょいとウチと客だけで話しをしたいなと。アポが取れたんで、行ってきます」
「一人で?」
「いや、部長もです」
「判りました」

トラブルではないということで、安心したようにまた机に向き直った小林に「それと」と、牧野は言葉を続けた。

「それと?」

小林が嫌そうな顔で肩越しに牧野をちらりと見て、それから小杉に向き直り、さらに顔を顰めて見せた。
この言い方はロクな話しじゃねえよなと、声には出さず、口だけパクパクさせて明子に言う。
明子はそうですねと同意するように頷いたむ。

「三課の三人、社内システムのグループにいても使い物にならんということで、戻されます」
「さようで。明日、ですか?」
「いや。もう、まもなく」
「うざっ」

誰よりも先に川田がそう言って、ガクリと首を曲げる。

「俺。あいつらの香水の匂い嗅ぐと、気持ち悪くなってくるんですよ。今日は気分よかったのに」
「空調の風向きで、微妙にぷわんと来るんですよねえ」

仕事中はあまり喋ることのない村田が、心底嫌そうな声でそう言うと、岡島も鼻をムズムズさせているような顔で、同意するように頷いた。
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