リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「実際、見合いしたことあるんだ?」

すでに冷めてしまった茶を啜りながら、小林は探るような目で明子を見て、尋問しているかのように問いかけの言葉を並べ始めた。

「仕方なく、二回ほど。ほぼ騙し討ち状態で店とかに呼ばれて、問答無用で引き合わされて」
「結果は?」
「結果? んー。一勝一敗って感じですかね。一人は断られて、一人は断って」
「どういう相手と見合いしたんだよ」

やけに熱心について食いつくなあと思いつつ、明子は正直に答えていく。

「小学校の教員と、眼科の医者でしたね。教員の人に断られて、医者は断って」
「教員は断られなかったら、話、進めてたのか?」

小林のその問いに、明子は「さあ。どうでしょ」と唸るように言葉をひねり出して、言葉の先を続ける。

「ダメだったかなと思いますけど。女の人にも、定年まで働いていてほしいって考えの人で、子どもができたら、仕事は続けられるかどうか判らないですねえって言ったのが、あまりお気に召さなかったみたいなんで」

そのころのことを思い出しながらしゃべり続けていた明子は、家族からの電話に出なくなってしまったきっかけはこれだったかもと、そんなことを考えた。
その見合いでの母とのいざこざが、今でもずっと後を引いているのだ。

「お互い、三十も過ぎると、最初から結婚ありきで話しをしていくんですよね。なんか、あれこれ話をしていても、細かいところで無理っぽいなあって感じはしてたんですけど。とにかく母が乗り気で。こっちのことなんてお構いなしで、話しを勝手に進めようとするから、ついケンカになって、なんだかんだバタバタしているうちに断られましたよ」
「いくつくらいの人だったんですか、その人?」

木村が不思議そうに相手の男について尋ねてきた。

「三十代後半だったかな?」
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