リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「残念ながら、それは迷惑じゃないんだよ」

小林はこの状況を楽しんでいるかのように笑い、からかうような口ぶりで美咲にそう反論した。

「どうしてっ」
「牧野が、望んでいるからだよ。牧野が、小杉の淹れた茶を飲みたがっているんだよ。書類の山、片付けて」
「そんなのウソよっ 牧野さんは、可哀想なその人に、同情して優しくしてあげてるだけですっ そうに決まってますっ」

きつい目つきで美咲は小林を睨みつけながら、叫ぶようにそう言い放った。
決まってますって、なんだ、そりゃと、美咲のその言葉に、小林は侮蔑を帯びた笑いを浮かべる。

「ママだって言っていたわっ 牧野さんは優しいから可哀想なその人に同情してるだけよって。でなきゃ、そんな人、気にかけるはずないって。そうよっ 私のほうが、ずっと牧野さんに相応しいに決まってるじゃないっ 私のほうが、ずっと若くて可愛いのよっ 私のパパは」
「ホントに、よく似てるよ。ヒステリックな喋り方も、思い込みの激しさも。なにより中身がそっくりだ」

延々と続く美咲の独りよがりな言葉に、くつくつと肩を揺らして笑いだした小林を、美咲は怪訝な面持ちで見つめていた。

「な、なによ。似ているって」
「あいつの元女房。別れたかみさんにだよ」

小林のその言葉に、美咲は一瞬何かを考えるように黙り込み、すぐに勝ち誇ったような表情を見せた。

「ほら、やっぱり。牧野さんは私みたいなタイプが好きなのよ」

その表情と言葉に、小林は額に手を当てて、心底呆れ果てたというような苦笑いを浮かべた。

「ホンっトに、よく似てるよ。一応、何度か会っているしな。結婚前にも結婚後も。ついでに言うなら、別れた後もな。マジで、ムカつくくらいに似てるよ、中身がな。牧野がもう二度と何があっても顔も見たくないと思ってる女に、そっくりだよ」

小林の冷ややかな目に、美咲の表情が次第に強張っていく。
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