リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「甘ったれで、一人じゃなにもできなくて。そのくせ、自分の思い通りにならないことがあると、みっともないくらいに、駄々をこねて、怒って、泣いて、喚いて。それでもどうにもならないと、今度はパパやママを引っ張り出して、なにがなんでも自分の我侭をごり押しして通そうとして。それで、最後は牧野のことをボロボロにしていきやがった、あのバカ女に、なにもかもがそっくりなんだよ。だから、お嬢さんのことなんて、なにがあっても牧野は相手しない。今じゃ、牧野にとっちゃ、前妻みたいなタイプの女は、二度と関わりたくない、傍にいられるだけで虫唾が走るイヤな女なんだよ。もう、諦めろ」

あまりの悔しさに、美咲の瞳から、一粒の雫が零れ落ちる。


-ひどい


美咲は、そのまま両手で顔を隠すようにして、肩を震わせ出した。

「原田。お嬢さんがいなくなってからのことを、少しは考えろよ。それまでに、狙い通りの寿退職ができりゃいいけどな。もしもできなかったら、どこで仕事をしていくつもりなんだ? 今のままじゃ、そこに座ってなんていられないぞ」

いいのか、それで。
その静かな問いかけに、幸恵は何度か助けを求めるように沼田に目を向けていたが、沼田は興味もないというように、淡々と仕事をしているようだった。


-小林さん、もうやめてください。


小杉の静かな哀願に、小林は笑う。

「お前も、怒っていいんだぞ」
「怒ってますよ」
「顔に出てねえ。あんなことを言われても、まだ、あいつら許せちまう余裕があるだろ、お前」

まあ、そういうやつでないと、あれはダメだしな。
どうにか、明子に聞き取れるていどの小さな声のその呟きに、明子は首を傾げる。
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