リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「で、用件はなんなんだ?」
「んー。なんか……、病気? らしいです、母親。入院しているから、会ってやってくれないかって」
「会ったのか?」
君島の低いその声に、牧野は小さく首を横に振り続けた。
「なんか、あんまり容態よくないとかで、一度でいいから、顔だけでもって言うんですけどね」
牧野は面倒くさそうに、男からの電話の内容を吐き出すように喋りだした。
「今さら、会ってくれとか言われても……。なんだ、そりゃだし。会ったところで、話すこともないし、しょうがないでしょ。その男も、そんなこと言いながら、入院費がどうだのこうだのと、金の話をするんでね。こりゃ、金が欲しいだけだなって」
だから会う気はないと、きっばり言いましたよ。
陰のある眼差しで空を睨みつけながらそういう牧野に、君島はやや重い口ぶりで問いかけた。
「それは、お袋さんには話したのか?」
「え?」
その問いかけが、あまりにも思いがけなかったのか。
牧野は目をくりくりさせて、君島を見た。
「いや、してないです。だって、お袋殿だって、今さら会いたいって言われても、困るだけじゃないですか」
話せませんよ、こんなことと、当然の事のように君島の言葉に首を振る牧野に、君島は大きく息を吐き出し、そうかとだけ答え黙り込んだ。
「んー。なんか……、病気? らしいです、母親。入院しているから、会ってやってくれないかって」
「会ったのか?」
君島の低いその声に、牧野は小さく首を横に振り続けた。
「なんか、あんまり容態よくないとかで、一度でいいから、顔だけでもって言うんですけどね」
牧野は面倒くさそうに、男からの電話の内容を吐き出すように喋りだした。
「今さら、会ってくれとか言われても……。なんだ、そりゃだし。会ったところで、話すこともないし、しょうがないでしょ。その男も、そんなこと言いながら、入院費がどうだのこうだのと、金の話をするんでね。こりゃ、金が欲しいだけだなって」
だから会う気はないと、きっばり言いましたよ。
陰のある眼差しで空を睨みつけながらそういう牧野に、君島はやや重い口ぶりで問いかけた。
「それは、お袋さんには話したのか?」
「え?」
その問いかけが、あまりにも思いがけなかったのか。
牧野は目をくりくりさせて、君島を見た。
「いや、してないです。だって、お袋殿だって、今さら会いたいって言われても、困るだけじゃないですか」
話せませんよ、こんなことと、当然の事のように君島の言葉に首を振る牧野に、君島は大きく息を吐き出し、そうかとだけ答え黙り込んだ。