リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
明子は今にも泣き出してそうな震えている小さな声で、今まで牧野に言うことができなかった言葉を告げた。

「いつも、……いつも、他の女の子は怒鳴ることなんかないのに。なんで……、なんで、いつも、私だけ、怒鳴るんですか」

牧野からの返事はなかった。
牧野の無言の息づかいを感じながら、明子は言葉を続ける。

「私だって、牧野さんに怒鳴られたら、怖い。そんなふうに大声だされたら、怖い。怖い牧野さんからは、逃げたくなっちゃう。怒鳴るなら、もう、電話してこないでください。イヤです」

最後に、もう一度「怖いのは、イヤです」と告げて、明子はまた電話を切った。
携帯電話を握ったまま、しばらく待った。
けれど、牧野からの電話は掛かってこなかった。
島野からメールが届いていることを思い出し、明子はそれを開いてみた。
おやすみのメールだった。
かわいい猫の写真が添えられていた。


 仲直りできたかい?
 それじゃ、また明日。
 おやすみ。


笑っている島野の顔が思い浮かんだ。


昨日のことは仲直りできた。
でも、またケンカしてしまいました。
島野にそう伝えたら、島野はきっと、しょうがない子だなと笑うだろう。
明子は、鼻をすんと鳴らした。
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