リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
(十三号、くらい、かな?)
(指輪のサイズ)
(細かったなあ)
(細くて、長い指、だったなあ)


自分の丸くて太い指に、明子に悲しくなってきた。
牧野の細い体を、明子は思い浮かべた。
駐車場で抱きしめられて。
おずおずと、その背中に腕を回して明子も牧野を抱きしめた。
あのときの牧野を、明子は思い出す。
出会ったころから、牧野は痩せていた。
けれど、今は、ただ痩せているというだけでなく、ちゃんと節制して鍛えていることが判る、引き締まった体だと思った。


(ぜったい、牧野のほうが痩せてるわ)
(お腹なんて、ペッタンコだったもん)
(こんなぶよぶよの体、見られたくないなあ)


改めて、もう一度、自分の身体をじっくりと点検して……
明子はがくりと頭を垂れて、思い切り落ち込んだ。
ドキドキも。
ワクワクも。
フワフワも。
今夜、牧野が明子に与えてくれた楽しい気持ちがすべて。
明子の中から、きれいに消えてなくなった。


(なんだ、このぶよぶよの腹と、あの指で、この贅肉を、抓って笑うかも)
(あんな時間に食ってるからだと、うんざりとした顔で呆れるかも)


悪いことばかりを考えて、明子の気持ちはどんどん沈んでいった。
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