リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
牧野の寝顔を、夜の暗闇の中で、静かに、幸せな気持ちいっぱいで見つめていたあの時間が、ウソのように遠くなっていた。
怖いと告げて電話を切ったあと、牧野から電話が掛かってくることはなかった。
怒っているのかもしれない。
明日もまた、気まずい思いのまま、一日を過ごすことになるのかもしれない。
そう思うと、それだけのことなのに胸が苦しくなってきた。
牧野は、なにも間違ったことは言ってなかったのにと、明子は落ち込んだ。


(バカだ、あたし)
(心配して、くれていたのに)


それなのに、牧野にずけずけと指された図星に、拗ねて理不尽にも怒ってしまったのは自分だと、今さらながら悔やんだ。
夜は食べないと、ぜったいに痩せるのだと、そう決めたはずなのに、そんな決意もどこへやら、お腹が空いて眠れないしと、簡単に自分を甘やかしてしまった。
そんな自分の意志の弱さに対する後ろめたさがあったから、牧野の言葉を、素直に聞けなくなってしまった。


浴室に、また、明子のため息が反響した。
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