リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
『骨と皮しかないような腹、興味もねえよ』

そう言ってやれやれと笑う牧野に、明子は少し尖った声で反論する。

「……痩せてる子がいいって、言った」
『誰が?』
「牧野さん」
『俺が? いつ? つうか。なんだ、それ?』

言った本人になんだと尋ねられてもと、明子は頬をぷっくりと膨らませて、本格的に拗ねた。


(牧野さんが、言ったのにっ)
(牧野さんが、言ったからっ)


そう思うと、積年の怒りがふつふつと沸いて込み上げる。

「牧野さんが、言ったんですよ。小さくて痩せている子がいいって。小杉がなんか、興味ないって」
『俺が? マジで? 全然、身に覚えねえ』

そんな覚えはまったくないと断言する牧野に、明子は泣きだしたくなった。
多分、あれが一番最初の棘だ。
棘の形になって、明子の心に突き刺さった、一番最初の牧野の言葉だ。
明子は下唇を突き出すように、顔を歪めた。

『ホントに、俺がそんなことを言ったのか?』
「飲み会のときに、言ったんですよ」

改めて真偽のほどを確認する牧野に、明子が返してきたその言葉を聞いて、牧野がわざとらしいまでの盛大なため息を吐き出した。

『お前なあ。そんな、酒の席での酔っ払いの話……』
「でもっ 言いましたもんっ みんなの前で、大笑いながら。みんなに、そう言ったんですもん」

牧野さんが忘れても、私は忘れていませんもん。
拗ねた口調で続けられた明子の言葉に、珍しく牧野が口ごもるように言い訳をした。
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