リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「無茶なことはしてません。ダイエットはしてますけど。ちゃんと考えて食べてますよ。毎日、ちゃんとお弁当だって作ってるし」
『まあ、弁当は確かに旨いし、健康的な内容だ。それは認める』
「ですよね。だから、無茶なことはしてませんって」
『でもな。昼間は全然、食わなかったり、なのに、夜中になってそんな食いだしたり。なんか、おかしいだろ? ヘンだろ?』
「それは、今日だけの話です。昨日まで、そんなことありませんでしたよ」

心配がる牧野を安心させるようにそう言いながら、明子の零れそうになっていた涙をこっそり拭った。
牧野には見えているはずがないのに、気づかれないようにと、そっと拭った。


(また)
(心配かけちゃった)
(最近)
(心配ばっかり)
(させちゃってるかも)


明子の沈黙に、牧野は探りを入れるように言葉を繋げていく。

『なんかさ。前にも、おかしかったときがあったろ。連休過ぎたころかな。いきなり、ガツガツ食べたり、何も食べなくなったり。顔が浮腫んでたり、ニキビがたくさんできてたり』
「この年だと、ニキビじゃなくて、吹き出物っていうんですよ」

もう、おばさんですから。
小さな声のその反論に、牧野は「そんなこと、ねえよ」と、明るい口調で応じて笑う。

「連休明けのときは、ちょっと……精神的にいろいろと、へこむこととかあって。なんか、ヤケ食い、みたいな状態になっちゃって。食生活がかなり乱れてたから、浮腫んだり、肌荒れしたりしてただけですよ」

今はもう、そんなことないですよとそう続いた明子の言葉に、それでも、牧野の声にはまだ疑いの色があった。

『なーんか、怪しいんだよなあ。ホントに、無理してねえな?』
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