リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「大丈夫です。心配させるようなことは、ぜったいにしてません」

明子の大丈夫を聞くものの、まだ納得し切れていない様子の牧野は、それでもこれ以上は押し問答になってしまうと思ったのだろう。電話じゃ判らねえから、今夜はこれで勘弁してやると言って、ようやく追求をやめた。

「大丈夫って、言ってるのに」
『お前の大丈夫は、顔を見て、よくよく観察しなきゃダメだってことを、学習したよ、俺は』

この年になっても、まだ学ぶことがあったとはなと、やれやれと言わんばかりに息を吐き出して、だから、電話の大丈夫は信用しねえと言う牧野に、明子はつい唇を尖らせた。


(もう。大丈夫なのにー)
(もうもう、もうー。)


でも、牧野をこんなふうに心配性にしてしまったのは、自分かもしれないと思うと、申し訳なさも感じていた。

『まあ、無理しないでダイエットするっつうなら止めないけど、おっぱいは小さくすんなよな』

気に入ってんだから。
にたりと笑っている顔が見えるような牧野の口ぶりに、明子はバカっと喚いた。

「もう、バカ。バカ、バカ」
『うるせ。おっぱい星人の好物なんだから、しょうがねえだろ』

小さくするのは許さんと、先ほどまでの謙虚さなど全くなくなった俺様仕様の牧野に、明子はバカと言い立て続けた。

『よし。声もちゃんと聞けたから、そろそろ休むわ、俺は』

お前も、早めに休めよ。
タイミングよく欠伸が出たらしい牧野の声に、明子ははいと素直を答えた。

『おやすみ』
「おやすみなさい」

就寝の挨拶を交わして、お互いに、電話を切った。
牧野の声が聞こえなくなった携帯電話を、明子は胸に押し当てるように握りしめた。
ちゃんと仲直りできてよかったと、心の底から、電話を掛け続けてくれた牧野に感謝した。
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