リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
腹筋が終わるころ、番組はCMに入った。
どんなカクテルができるかしらと、明子は考えた。


(コーヒーで、カクテルねえ)
(ずいぶんと、大人向けのオーダーね、今夜は)


四十回の腹筋を終えた明子は、CMは飛ばさずそのまま流しておいて、今度は腕立て伏せ始めた。
CMの間に、目標の二十回をクリアできるかどうか。
誰かと、賭けか競争でもしているかのように続けていく。
腹筋をするようになったころは、目標の三十回をクリアするだけでも大変だったが、ようやく、少しだけ筋肉がついたのかもしれない。
三十回を、なんとか一定のリズムで続けていくことができるようになった。
だから、今日から腹筋の回数を、さらに十回増やした。
たかが十回でも、増えたら、かなりきつい。
腕立て伏せも、今夜から、メニューに加えた。


(関ちゃんって、毎晩、二〇〇回も、腹筋してるんだっけ)
(すごいわ)
(すごすぎだわ)
(脱いだら、バッキバキに、腹筋、割れているのかしら)


そんなことを妄想している自分に笑い、なんとなく、牧野のことを考えてしまった。


(筋トレとかしてるようなイメージは、まったくないけどさ)
(山を登るようになって、体、鍛えるようになったのかな)
(会社でも、ほぼ、階段、だものね)
(穂高に登りたいって言うくらいだもの)
(それなりに、体力をつけないと無理だものね)
(腹筋、しっかり、割れているのかな)


ふと、そんなことを想像して、顔に火がついた。


(バカ)
(なにを、想像してんのよ)


牧野の裸体を想像しようとしている自分に気づき、明子は慌てふためき自分で自分はバカバカと詰った。
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