リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
いつもより、一〇分ほど遅く、明子は出社した。
電車は、いつもの電車より二本も早いものに乗ったのだが、バス停一つ分手前で降りて、会社まで歩いてきたからだ。
運動不足解消という目的もあったけれど、そこで降りた本当の目的は、途中にある二十四時間営業のレンタルビデオ屋と本屋が一緒になった店に立ち寄るためだった。
参考書などが並ぶ棚の前に立ち、簿記試験のための参考書を明子は探した。
基本、朝はそこそこ早い時間に出社している。
コーヒーを飲みながらネットサーフィンしているその時間を、簿記の試験勉強に当てようとそう思い立ったのは、昨夜、就寝する直前だった。
眠る前、通勤バックの中から手帳を出して、挟んであるメモを取り出した。
牧野がくれたそのメモを、宝物のように掌に置き、見つめた。
頬がだらしないほど緩んでいるのが、自分でも判った。
それを切り抜きと同じように、リビングのローテーブルのガラス板に、明子は貼り付けた。
ガラス越しに。
そっと。
そっと。
撫でる。
簿記の三級ていどなら判らないことは、そうないと思う。
基礎は、できているはずだ。
でも、それでも、試験に向けての勉強は必要だった。
いつでも電話してこいとメモには書いてあるけれど、電話で聞いても判らないものは判らない。
それに、牧野のことだ。
なんだかんだ言いながら、面倒になると、明日教えてやるだのなんだのと言って、早めに出で来いなどと言い出すに違いないと明子は考えた。
いや、下手をしたら、家に押しかけてきてしまうかもしれない。
そんなことを考えた明子は、朝の時間を勉強の時間に当ててしまおうと、そう決めた。
牧野も、たいがい、朝は早い。
それはこの春からの生活で知っている。
だからそうしようと、明子は決めた。
電車は、いつもの電車より二本も早いものに乗ったのだが、バス停一つ分手前で降りて、会社まで歩いてきたからだ。
運動不足解消という目的もあったけれど、そこで降りた本当の目的は、途中にある二十四時間営業のレンタルビデオ屋と本屋が一緒になった店に立ち寄るためだった。
参考書などが並ぶ棚の前に立ち、簿記試験のための参考書を明子は探した。
基本、朝はそこそこ早い時間に出社している。
コーヒーを飲みながらネットサーフィンしているその時間を、簿記の試験勉強に当てようとそう思い立ったのは、昨夜、就寝する直前だった。
眠る前、通勤バックの中から手帳を出して、挟んであるメモを取り出した。
牧野がくれたそのメモを、宝物のように掌に置き、見つめた。
頬がだらしないほど緩んでいるのが、自分でも判った。
それを切り抜きと同じように、リビングのローテーブルのガラス板に、明子は貼り付けた。
ガラス越しに。
そっと。
そっと。
撫でる。
簿記の三級ていどなら判らないことは、そうないと思う。
基礎は、できているはずだ。
でも、それでも、試験に向けての勉強は必要だった。
いつでも電話してこいとメモには書いてあるけれど、電話で聞いても判らないものは判らない。
それに、牧野のことだ。
なんだかんだ言いながら、面倒になると、明日教えてやるだのなんだのと言って、早めに出で来いなどと言い出すに違いないと明子は考えた。
いや、下手をしたら、家に押しかけてきてしまうかもしれない。
そんなことを考えた明子は、朝の時間を勉強の時間に当ててしまおうと、そう決めた。
牧野も、たいがい、朝は早い。
それはこの春からの生活で知っている。
だからそうしようと、明子は決めた。