リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
まさか、本当に守衛に突き出されるなど思ってもいなかった様子の母親は、その言葉に慌てふためき「今、帰りますわっ」と言い捨てて、歩き出した。
どうしたものかと思いつつ、一度、無断で会社に入り込んだらどうなるか、身を以て知ったほうがいいのかもしれれないと考えて、明子は受話器を手に取った。
小林も、それを止めなかった。
(何度も、こんなことをするなんて)
(普通じゃないわよ、この人たち)
守衛を呼び出す内線番号の最初を一桁を押したところで、突然の怒鳴り声があった。
「ここで、なにをしているんだっ」
その声に振り返ると、美咲の兄になる営業課長の顔がそこにあった。
「何度言ったら判るんだよっ もう、いい加減にしてくれよっ」
「だって。美咲があんまりにもね、可哀想で」
「だってじゃないだろっ 何度も何度も、こんなことして。いい加減にしてくれよ」
明子よりも小林よりも、さらにうんざりした様子で二人を見ているその顔に、明子はとりあえず受話器を置いた。
家族もこの二人には手を焼いているのかと、少しだけ、井上課長に同情してしまった。
「連絡、ありがとうございました。母は連れて帰ります。お騒がせしました」
美咲の兄は小林を見てそう言うと、母親の手を取って引き立てるようにして、室内から連れ出していった。
その後を、美咲は必至の形相で追いかけて行った。
「……いつから、いたんだよ」
ようやく、いつもの朝の静けさが戻ってきた室内で、小林は買ってきた缶コーヒーを飲み始めた。
どうしたものかと思いつつ、一度、無断で会社に入り込んだらどうなるか、身を以て知ったほうがいいのかもしれれないと考えて、明子は受話器を手に取った。
小林も、それを止めなかった。
(何度も、こんなことをするなんて)
(普通じゃないわよ、この人たち)
守衛を呼び出す内線番号の最初を一桁を押したところで、突然の怒鳴り声があった。
「ここで、なにをしているんだっ」
その声に振り返ると、美咲の兄になる営業課長の顔がそこにあった。
「何度言ったら判るんだよっ もう、いい加減にしてくれよっ」
「だって。美咲があんまりにもね、可哀想で」
「だってじゃないだろっ 何度も何度も、こんなことして。いい加減にしてくれよ」
明子よりも小林よりも、さらにうんざりした様子で二人を見ているその顔に、明子はとりあえず受話器を置いた。
家族もこの二人には手を焼いているのかと、少しだけ、井上課長に同情してしまった。
「連絡、ありがとうございました。母は連れて帰ります。お騒がせしました」
美咲の兄は小林を見てそう言うと、母親の手を取って引き立てるようにして、室内から連れ出していった。
その後を、美咲は必至の形相で追いかけて行った。
「……いつから、いたんだよ」
ようやく、いつもの朝の静けさが戻ってきた室内で、小林は買ってきた缶コーヒーを飲み始めた。